[東京 10日 ロイター] - 原油価格の上昇基調を背景に世界的なリスク志向は健在だが、日本株はほとんど恩恵を受けず、レンジ相場が長期化している。日銀のマイナス金利導入や米早期利上げ観測の後退によるドル安/円高が重しだ。日本株は原油価格が仮に一段高となってもメリットを受けにくい半面、原油が下落に転じればリスクオフの波を受けるとの警戒感も出ている。
<取り残される日本株、円高・原油高のデメリット>
今年2月半ばに原油価格が底打ち反転して以降、世界的なリスク回避の動きが収束し、株価にも底入れ感が広がった。原油など資源価格の上昇は資源国や新興国経済の追い風となり、グローバル金融市場の安定をもたらしが、日本株に限ってはリスクオンムードから取り残されている。理由はいうまでもなく円高だ。
米利上げ観測の後退が金利の付かないコモディティに投機的な資金を呼び込んでいるが、仮にカネ余り環境が続いても円高が続く限り、日本株を押し上げる要因にはなりにくいとの見方が一般的だ。円高・原油高は多くの企業にとって二重のデメリットになる。加えて株式の需給面でもリスクオンの恩恵は薄いとみられている。
原油価格の下落局面では財政難の産油国系ファンドが日本株を売却したとみられているが、市場では「原油価格は現状で下げ幅の3分の1戻しに過ぎない、産油国の財政が安定するには持続的に半値戻しの1バレル66ドル付近まで上昇する必要がある。産油国が日本株に再投資という動きには当面ならない」(野村証券シニア・インベストメント・ストラテジストの田之上章氏)との指摘が出ている。
<原油の需給緩む可能性、米利上げも焦点>
一方、原油価格が下落に転じた場合はリスク要因になる。石油輸出国機構(OPEC)によると世界の原油需要は増加傾向にあり、2016年には日量約9420万バレル(前年比1.3%増)と過去最高を更新する見込み。だが、需要増加の中心はインド、中国などの新興国としており、市場には予測に懐疑的な見方もある。北海ブレントや米WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)などの主要品種が節目の50ドルを回復したことで、米シェール業者が休止していた石油掘削装置(リグ)を再稼働する動きも報じられている。先行きの需給が緩まないとは限らない。
みずほ証券シニアコモディティアナリストの津賀田真紀子氏は「WTI原油先物のネットロングが2014年以降で最高水準まで積み上がっている。過去の経験則では6月のファンド決算期を過ぎると原油先物も下落する傾向がある」という。年後半にかけて原油の需給が緩めば、金融市場のリスクオフを誘発する可能性もある。
米早期利上げ観測の後退が原油をはじめとする資源価格を支えてきたことを考えれば、やはり目先の焦点は米国の金融政策になる。原油高によるインフレ期待上昇などが後押しし、米国が利上げに踏み切れば、金利差によるドル高/円安に進むとの予想もあるが、一方では「もっとも良いシナリオは米利上げ先送りによるリスクオン地合いの維持だ。米利上げの場合はグローバルリスクオフの衝撃が大きく、新興国通貨安なども伴い日本株にはマイナスに作用する」(第一生命経済研究所主任エコノミストの藤代宏一氏)との見方もある。
14―15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では利上げ見送りの公算が大きいとはいえ、イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長が会見で7月利上げを示唆するコメントを発した場合は、波乱の火種となることも考えられる。
(河口浩一 編集:石田仁志)