パキスタンの洪水被害は先週末以降、南部のインダス川下流域に被害が拡大し、政府や国際機関の救援活動が追いつかない事態になっている。そこに嫌なニュースが入ってきた。

 米国務省のクローリー広報官が、8月26日の定例会見で「パキスタンのタリバン運動(TTP)」などのイスラム武装勢力が「洪水の災害支援を行っている外国人をテロの標的にするという情報」があることを明らかにした。

 情報源が示されていないため、この情報の信頼度を測るのは困難だ。ただ関係者なら誰しも、今月初めに起きた痛ましい事件を連想せずにはいられないだろう。

 隣国アフガニスタン北東部のバダグシャン州で8月5日、医療支援団体「国際支援ミッション(IAM)」の眼科医療チーム10人が武装勢力の襲撃を受けて殺害された。殺害されたのはアメリカ人6人、ドイツ人1人、イギリス人1人、通訳のアフガニスタン人2人で、東部での医療活動を終えて首都カブールに戻る途中だった。IAMは1966年からアフガニスタンの無医村地域などで活動を続けている。犯行声明を出したタリバンは、医療チームが「キリスト教の布教していた」と言うが、IAMはこれを否定している。

 BBCをはじめとするイギリスの報道機関は、殺害されたイギリス人が若い女性医師で結婚を間近に控えていたこともあって、殺害の経緯も含め大きくこの事件を取り上げた。これまで比較的治安が良いとされていた北東部で事件が起きたことで、各国の援助関係者は今後の活動方法の再検討を迫られているという。

 国籍や宗教が問題なのではない。2008年8月に、アフガニスタンで長年に渡って医療や農業分野の支援活動を続けている日本のNGO「ペシャワール会」のメンバー伊藤和也さんが誘拐されて殺害される事件が起きたことは記憶に新しい。

 複雑な歴史的背景が絡む中東の問題を善悪だけで単純に測りたくはない。それでも困窮する地元住民を助けようと善意で活動している人たちが無残に殺害されるのは、あまりにもやりきれない。

 パキスタンでは日本の自衛隊が支援活動を始めているし、日本赤十字社の医療チームも現地に向けて出発した。活動に伴う危険には、十分に警戒してもらいたい。そして当然だが、支援活動に携わる人たちがテロの標的となることは絶対に許容できない。日本の世論も、もっと怒っていいと思う。

――編集部・知久敏之

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