[東京 4日 ロイター] - 4日に新規株式公開(IPO)した日本郵政3社の株価は、上々の滑り出しとなった。いずれも売り出し価格を大きく上回って初値を形成。売り出し株数の少ないかんぽ生命保険<7181.T>は、個人投資家の人気を集めストップ高となった。
株価が上昇するにつれ割安感や利回り妙味がはく落するため、大幅な値上がりは難しいとされる一方、TOPIX組み入れを背景に年末にかけて、じり高が続くと想定されている。
<想定外の初値形成>
「ここまで上がるとは思わなかった」──。外資系証券の日本株トレーダーは驚きを隠さない。新規上場前に売買が行われるグレーマーケットでは、公開価格から5─6%程度、上乗せした価格で取引が成立していたとされ「事前に購入した海外投資家は、もろ手を挙げて喜んでいる」(前出のトレーダー)という。
午前9時33分に全株一致となった日本郵政<6178.T>とゆうちょ銀行<7182.T>の初値は、それぞれ1631円と1680円。売り出し価格をともに16%程度上回る水準だった。一足遅れて10時06分に売買が成立したかんぽ生命の初値は2929円と、売り出し価格(2200円)を33%上回った。
想定外の郵政人気は、市場全体にも好影響を及ぼした。日経平均は大引けにかけて利益確定売りなどに押されたが、一時は468円高の1万9151円まで上昇。「事前には大型の新規上場に対する漠然とした不安感があったが、堅調なスタートを切ったことで安心感が広がった」(大手投信ストラテジスト)との声が多い。
<注目されたかんぽの「伸びしろ」>
郵政3社の中で、最も人気を集めたのがかんぽ生命だ。取引時間中に値幅制限いっぱいとなる3430円まで買われ、終値では37万株の買い注文を残し比例配分となった。
かんぽ人気の一因は、売り出し株数の少なさ。郵政の4億9500万株、ゆうちょの4億1244万株に対し、かんぽ生命は6600万株と約7分の1に過ぎず、タイトな需給環境にあるという。
松井証券・シニアマーケットアナリストの窪田朋一郎氏は「社内での応募倍率は、かんぽが最も高く、次いでゆうちょ、郵政の順番」と指摘。買えなかった個人投資家が、その他2社に比べて多い分、セカンダリー(流通市場)での個人の買い需要が膨らみやすいという。
また「日本郵政はともかく、ゆうちょは銀行間の競争が激しくなっている。かんぽの方が相対的に伸びしろがある」(フィリップ証券・リサーチ部長の庵原浩樹氏)と、成長性を評価する声もある。
2014年に米保険プロエクティブライフを買収した第一生命保険<8750.T>のように「海外進出のシナリオを描きやすい」(国内投信ファンドマネージャー)ことも、買い手掛かりと捉えられている。
<調整局面では債券代替需要も>
好発進となった郵政3社だが、さらなる急速な株価上昇を見込む声は乏しい。株価が上昇すれば割安感や高配当利回りなどのバリュエーションが低下し、資産株としての魅力が乏しくなるためだ。
きょう終値ベースでのPER(株価収益率)は、郵政で20倍台、ゆうちょで19倍台、かんぽで24倍台と東証1部平均の16倍を上回っている。年間予想配当利回りは郵政、ゆうちょがともに2%台後半、かんぽは1%台半ばと引き続き市場平均以上の水準だが、売り出し価格ベースの利回りに比べれば魅力は低下している。
もっとも、市場では年末にかけて郵政3社のじり高基調が続くとの見方が多い。年末のTOPIX組み入れを控え、パッシブファンドなど国内外の機関投資家によるテクニカルな買い需要が株価を支える見通しだ。
また、年内は日米欧の金融政策に関心が高まるなかで、株価が一時的な調整局面を迎える場面では、郵政3社に買い需要が生まれるとの見方もある。いちよしアセットマネジメント・執行役員の秋野充成氏は「投資家がリスク回避を強めた場合、債券代替としての買いが郵政3社に向かいやすい」と指摘している。
(杉山容俊 取材協力:長田善行 編集:田巻一彦)