[東京 18日 ロイター] - 今週の外為市場では、米シェール業界の縮小・再編で減速感が強まっている米景気が年後半に向けて本当に回復できるのか見定める展開となりそうだ。米経済は1―3月の弱さを脱するとみられていたが、足元では弱い指標が相次ぎ、利上げ先送り観測も浮上してきた。

これを受けて、対ユーロなどでの顕著なドル安は反転の手掛かりをつかめていない。

ドル/円は「蚊帳の外」との見方もあるが、対円でのドル安を妨げていた機関投資家の外株・外債買いの勢いが弱まれば、下値リスクが意識される。

予想レンジはドル/円が118.00―120.50円、ユーロ/ドルが1.1300―1.1600ドル。

<弱さ目立つ米景気指標>

最近発表された米国の経済指標では、弱さが目立つ。

15日に発表された5月のミシガン大消費者信頼感指数は88.6と、4月の95.9から低下し、昨年10月以来の低水準となった。4月の米鉱工業生産指数も前月比で0.3%低下し、予想の0.1%上昇を下回った。

4月の米小売売上高は前月比変わらずと、予想の0.2%上昇を下回った。4月の米卸売物価指数(PPI、最終需要向け財・サービス)は前年同期比では1.3%低下し、2010年以来最大の下げ幅となった。

「経済が第1・四半期から第2・四半期にかけて弱まっているとの不安が市場で強まっている。その不安で、利上げ予想はどんどん後づれしている」とノバスコシア銀の米国債トレーディング部長、チャールズ・コミスキー氏は述べる。

市場では「6月利上げは完全に後退したが、9月すら微妙になってきた」(外為アナリスト)との声もでている。

米経済の弱さの背景について、「米国では、2つの景気推進エンジンのうち1つが止まってしまった。その上、ドル高が足を引っ張っている」とグローバル・エコノミスト、斎藤満氏は言う。

米国では「ビッグ・データ」及び「シェール革命」が景気推進の主翼だったが、後者は原油価格の下落によりシェール関連設備投資が大幅に減り、GDPの顕著な押し下げ要因となっている、と同氏は指摘する。

1―3月の米GDPは年率0.2%成長と市場予想を大きく下回ったが、在庫を除いた最終需要ベースでは0.5%のマイナスだった。原油安で石油掘削関連の投資が大幅に減り、これが設備投資を大きなマイナスにしたことが背景だ。

米国には数十社のシェール石油・ガス企業があり、その多くは原油安に対応して設備投資を25―70%削減している。

<ニューヨーク連銀のドル高の影響度試算>

他方、ニューヨーク連銀は独自で開発したモデルに基づいてドル高の景気へのインパクトを試算し、15%のドル高で、0.6%ポイントのGDP押し下げ効果があるとの推定結果を発表した。

主要6通貨に対するICEフューチャーズのドル指数<.DXY>は今年3月13日に100.390まで伸び上がり、昨年5月の安値(78.906)から27%上昇した。足元では、93.42付近まで反落しているが、昨年の安値比で依然18%高となっており、ドル高が米経済の負担となっている。

ただ、米株式市場は、依然、実体経済とかい離して上昇しており、14日の米国株式市場は急伸し、S&P総合500種は終値で過去最高を更新した。

今月6日、イエレンFRB議長は、現在の米株市場がバリュエーションからみて、かなり割高で、潜在的なリスクが高まっているとした。一方、債券市場については特段バブルではないとしたが、FRBが利上げを始めれば、市場金利はかなり上昇すると発言した。

<本邦投資家による対外証券投資動向に注目>

ドル/円相場にも変化が訪れるかもしれない。

財務省によると本邦投資家は4月に海外株式を1兆0517億円買い越したが、3月の2兆4993億円から買い越し幅が低下した。

4月の買い越し規模は今年に入って最低で、週次データでは、5月3日―5月9日の買い越しは963億円に留まっている。

他方、本邦投資家は、4月に海外債券を2兆8628億円売り越している。

JPモルガン・チェース銀行チーフFX/EMストラテジストの棚瀬順哉氏は「外株投資の減速が今後も続くようであれば、国際収支からくる円高圧力が、現在想定しているよりも強まる可能性もある」という。

日本の3月経常黒字額は2.8兆円と、市場予想の2.1兆円を大きく上回り、単月の数字だけで昨年一年間の黒字額(2.6兆円)を上回った。

<ECBトレードの巻き戻しが継続>

弱含みのドルの裏側では、ユーロや英ポンドの力強さが目立つ。

ユーロは15日、1.1468ドルまで上昇し3カ月半ぶり高値をつけた。背景は、投機筋を中心とする「ユーロショートの巻き戻し」。

テクニカル的に、ユーロ/ドルの目先の上値ターゲットは1.15ドル付近とみられているが、1.20ドル付近までの上振れも予想されている。

英ポンドは14日に1.5810ドルまで上昇し、昨年12月以来5カ月ぶりの高値を付けた。

欧州債券市場では、ECBの量的緩和(QE)期待で膨らんだ欧州債ロング(ECBトレード)の巻き戻しが進行中であり「株高・資源価格の反発が続くなら、更なる欧州金利上昇とユーロの続伸があっても不自然ではない」(米銀)という。

他方、ギリシャ問題に関する感応度は徐々に低下しており、「ギリシャの話には食傷気味」(アナリスト)との声も上がっている。

<主要指標と中銀関連スケジュール>

主要経済指標では、19日に豪準備銀行の金融政策会合議事要旨公表、5月の独ZEW景況感指数、4月の米住宅着工件数及び建設許可件数、20日に1―3月の日本の実質国内総生産(GDP)速報値、英中銀金融政策委員会議事要旨、米FOMC議事要旨、21日には日銀金融政策決定会合(2日間の日程)、対外対内証券売買契約等の状況(前週分)、5月の米フィラデルフィア連銀製造業景気指数、4月の米景気先行指標総合指数、22日に日銀決定会合内容発表及び黒田総裁会見、4月の米消費者物価指数などがある。

(森佳子)

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