[アテネ 25日 ロイター] - ギリシャのラファザニス・エネルギー相が電力会社の民営化をめぐって政府に楯突き、チプラス政権発足以来、初めて政権内の亀裂が露わになった。債権者と交渉するチプラス首相が、いかにぎりぎりの綱渡りを迫られているかが鮮明になった格好だ。

首相は先週、欧州連合(EU)および国際通貨基金(IMF)との間で救済プログラムの4カ月延長で合意した。債務不履行(デフォルト)の脅威にさらされて屈服した格好だが、表向きは勝利を装っており、今のところ国内で大きな反発や抗議は避けられている。

しかしエネルギー相が25日、電力会社PPCや電力網大手ADMIEの民営化計画を推進しないと表明したことで、政権に最初の亀裂が入った。政府は24日、既に入札を開始した民営化事業については計画を凍結しないと約束する改革案をEUやIMFに提出したばかりだからだ。

ラファザニス氏は与党・急進左派連合(SYRIZA)内でも極左メンバーで、造反すれば政権を倒しかねない影響力がある。そうした兆候はまだ見られず、これまでのところ他の問題に関しては従来の主張を後退させている。

とはいえチプラス首相は今後数カ月間、EUとIMFから要求された不人気政策を実施しつつ、ラファザニス氏をなんとか味方に付け続ける必要がある。

首相は真っ向から相反する2つのメッセージを同時に発信せざるを得ない。債権者向けには緊縮路線を踏み外しませんと言い、与党議員と国民には緊縮策から抜け出したと説得する必要があるのだ。

ある政府高官によると、チプラス首相は密室会議の場でシリザ議員らに対し、「状況はなお厳しい。われわれは交渉力だけではなく、統治能力によって判断されることになる。早急にプログラムを実行しなければならない」と語ったという。

首相が食料費補助の実施や住宅差し押さえの回避などの「戦利品」を国民に届け、ギリシャが債務交渉で一定の柔軟性を勝ち取ったことを証明できるかどうかに多くは掛かってくるだろう。

ギリシャが24日に提出した改革案は、予算に負担を掛けない範囲で一定の社会福祉支出を許すとする文言が盛り込まれている。しかし今後、ギリシャはより具体的な改革計画を示し、4月末までに承認を得る必要がある。

何といっても重要なのは、支援を受け続けるために不人気な政策を採決に掛ける必要が出てくるかもしれないことであり、シリザ議員の一部が造反する可能性も考えられる。

世論調査機関アルコのコスタス・パナゴポロス氏は「シリザ議員を含め、だれもが実際に何が起こるのかを見守っている。あらゆる措置について逐一許可を仰ぐことになるのではないか。選挙前と変わらず、外国から指図されるのではないかと」と語る。

今のところ、国民はチプラス首相の交渉を圧倒的に支持している。真価が問われるのはシリザ自体および、救済に断固反対する連立政党「独立ギリシャ人」からの支持を維持できるかどうかだ、とパナゴポロス氏は指摘した。

<債権者は懐疑的>

ギリシャの改革案に対する債権者からの当初反応を見る限り、彼らはチプラス首相への強硬姿勢を緩めそうにない。IMFは改革案が詳細を欠いていると苦言を呈した。

こうした中、二律背反の立場に置かれているのはラファザニス・エネルギー相らシリザの古参議員だけではない。

経済学者から財務相に就任したバルファキス氏は何年も前から、救済策を「有毒」、「破滅を招く」、「ねずみ講」などと厳しく批判してきた。しかし今、憎むべき救済策の一環として改革案を策定しなければならなくなった。

バルファキス財務相は生意気な振る舞いでユーロ圏政策当局者の眉をひそめさせ、カジュアルな服装と言動で大いに注目を集めてきた。最近ではショイブレ・ドイツ財務相に「最大限の敬意」を示しているとしてショイブレ氏との対立説を否定するとともに、「彼が話すのを聞いて、異を唱えるのを楽しんでいるよ」とジャブを送った。

ユーロ圏財務相らとの交渉中、電話を取っていたのはチプラス首相自身だが、パナゴポロス氏によるとバルファキス氏が政権を去ることは考えにくい。彼が離脱すれば政権にとって大きな失点と見なされるからだ。

パナゴポロス氏は「バロファキス氏は政権に留まるだろう。彼は単なる一閣僚ではなくシンボルだ」と語った。

(Deepa Babington and Angeliki Koutantou記者)

Reuters Copyright (C) 2026 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。