こうした「平和とも戦争ともつかない」状況においては、敵のことを理解するだけでは不十分で、積極的に対抗していくことになるとメトレウェリは主張する。

「われわれは能力を高め、大胆に影響を強めていく。つまりイギリスが歴史的に持つSOE的な本能を活用していくことになる」と彼女は述べた。

SOEとは、第2次大戦中の1940年に、当時の首相ウィンストン・チャーチルによって設立された「特殊作戦執行部」のこと。「欧州に火を付けろ」というチャーチルの指令の下、ドイツ占領下の欧州各地で破壊工作を行い、抵抗運動を支援することがSOEのミッションだった。

だが近年のMI6はハイレベルな情報の収集に予算を集中的に投じており、それに比べるとこうしたミッションはだいぶ時代がかって見える。

ムーアは2020年に長官に就任すると、「戦略的優位」に関わる部門を解体。事情通によれば、これはロシアや中国、イランといった国々による敵対的な活動への対応を担当する部署だったと言う。

「MI6はありとあらゆる秘密作戦を担う政府の万能ツールであるべき」という政府関係者の考えは間違っていると、MI6の関係者たちは言う。そうではなく、MI6はイギリスの意思決定の中枢にいる人々に、すぐに役立つ機密情報を提供することに力を注いでいるのだと。例えば交渉に際し、相手国の手の内が分かっていれば、イギリスに有利な結果が迅速に得られる可能性は高くなる。

「万能ツール」か「情報屋」か