プーチンの取り巻きの資産情報をリークしたり、一般市民の生活を混乱させるような虚偽情報を流したりする作戦もいい。例えば、偽のオンライン広告を流して、人々の戦意や愛国心を低下させる。

これは第2次大戦のとき、イギリスがドイツに対して使った戦術でもある。財政危機にあるロシアの地方都市で銀行の取り付け騒ぎを起こす手もある。

こうした作戦は高度な情報アクセスがなくても実行できる。必要なのは想像力と独創性、そして度胸だ。MI6の能力がメトレウェリが示唆したような冒険的な作戦を妨げているのではない。むしろMI6の野心的な職員たちは、こうしたことを自由にやりたがっている。

問題は政治的リーダーシップにある。作戦が失敗したとき、あるいは作戦が大成功して、激怒したロシアが報復してきたとき、誰がその責任を負うのか。

これまでのところ、メトレウェリの上司つまり政府は、彼女に味方してきた。メトレウェリが次期MI6長官に任命された直後、彼女のウクライナ人の祖父コンスタンティン・ドブロウォルスキがナチス・ドイツのスパイで、おそらく戦争犯罪人だとタブロイド紙デイリー・メールが報じたときも、大事にならずに乗り切った。

また、メトレウェリには多くの裁量もある。MI6は非常に緩い監督下にあることで知られる。英議会の情報安全保障委員会はまるで監視の役割を果たしておらず、外務省はあくまで名目的な上部機関であるにすぎない。厄介な問題が浮上しても、「機密に関わるため答えられない」で押し通してきた。

MI6は英国の最後の「切り札」