だが昨年10月7日以降の戦争で風向きが変わり、彼らの大義が再び前面に押し出された。

サウジアラビアでもエジプトでも、国民の間ではパレスチナに連帯する思いが強い。

だから政府もハマスへの共感を表明せざるを得ず、イスラエルとの交渉は棚上げとなった。

数週間前にはサウジアラビア政府も、国交正常化は進めたいが、その前にイスラエル側がパレスチナ国家の実現に向けて具体的かつ「不可逆的」な歩みを進める必要があると指摘していた。

たとえ「口約束」でもいい

ところがイスラエルの有力紙の報道によれば、2月になるとサウジ側の主張が変わった。

「不可逆的」な措置は、もはや国交正常化の前提条件ではなくなった。

パレスチナ国家の建設という大原則を支持すると、イスラエル側が口頭で表明すれば十分だという。

このせりふ、もちろんネタニヤフには口が裂けても言えない。

しかし、この程度のリップサービスでサウジアラビアとの関係を改善できるなら、そしてそれが世界中のイスラム諸国と友好関係を結ぶ突破口となるのなら、いかに頑迷なネタニヤフでも受け入れる可能性がある。

ただし、これがうまくいくには以下の全ての要素がほぼ同時に満たされねばならない。

停戦、人質全員と捕虜(イスラエルに収監されているパレスチナ人)の交換、親イラン武装組織からのロケット弾攻撃の停止(少なくとも縮小)、そして2国家共存の原則に立ち戻るための「小さな一歩」だ。

この小さな一歩にはガザ地区の復旧と国境警備に関する具体的合意、そしてパレスチナ自治政府の無能な指導部を入れ替える方策についての合意も含まれる。

これら全てを実現できれば、バイデン政権にとってはまさしく画期的な勝利となる。

だが失敗すれば、この地域は元の状態(散発的な武力紛争の際限なき繰り返し)に逆戻りするだろう。

そして最悪の場合、今なお続く戦争の炎が今よりも広がり、ずっと激しく燃え盛ることになる。

©2024 The Slate Group

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