高度な職に就くために学んだ大卒者は今、低スキル労働に従事せざるを得ず、他の労働者らは賃下げの憂き目に遭っている。

不動産が家計資産の70%を占める中国にあって、住宅所有者は貧しくなっていると感じている。数少ない明るいセクターである電気自動車(EV)産業でも、価格競争がサプライヤーと労働者を苦しめている。

アナリストによると、国民に広がる悲観論は、習近平国家主席に社会不安のリスクを突きつけかねない。中国が日本型の経済停滞に陥っているのだとすれば、日本のような経済発展を達成する前にそうなってしまうということだ。

世界中の産業が中国のサプライヤーに大きく依存している以上、このことは幅広い影響を及ぼすだろう。アフリカと中南米は、中国がコモディティーを買ってくれて、工業化の資金を出してくれると期待している。

2024年はどうなる

中国が究極の選択を行うための時間はほとんど残されていない。

政策当局者は経済の構造改革に意欲を燃やすが、中国において改革は常に難しかった。

地方からの出稼ぎ労働者向けに社会保障を増やす試みは、社会不安とコストへの懸念から既に頓挫(とんざ)しつつある。出稼ぎ労働者が都市部住民と同様の公共サービスにアクセスできるなら、家計消費を通じてGDPを1.7%増大させるとの試算もあるのだが。

不動産および債務の問題を解決しようとする試みも、同様の懸念に突き当たっている。

つまり、失敗した投資の代償をだれが払うのか、という問題だ。銀行か、国有企業か、中央政府か、はたまた民間企業や家計か──。

エコノミストによれば、どの選択を採っても将来の成長率は押し下げられかねない。

中国は今のところ、改革のために成長を犠牲にする選択に及び腰なようだ。

政府の顧問らは、来年の成長率目標を5%前後とするよう求めている。これは今年と同水準だが、今年の成長率はロックダウンによって低迷していた前年と比較したものだ。来年はその効果が消える。

5%前後の目標を立てれば、債務を増やさざるを得ないかもしれない。ムーディーズは今月、そうした財政の緩みを理由に中国の格付け見通しを「ネガティブ」に引き下げ、これを嫌気して中国株は5年ぶりの安値に沈んだ。

借りた資金を何に回すかによって、中国が姿勢を変化させているのか、もしくは行き詰まりが懸念されている成長モデルへさらに軸足を置いているのかが分かるだろう。

[ロイター]
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