<紛争が絶えない世界で有利な中国、軍事経済化が進むロシア、経済的重要性が増すグローバルサウス...。アメリカの力が陰るなか、次の世界秩序をつくるのはどこか?>

この数年で世界の地政学的環境は驚くほど変わってしまった。

いま火を噴いている2つの戦争を見ればいい。大国間の対立が再び国際関係の軸になっているではないか。

パレスチナ自治区ガザとウクライナの戦争は世界の分断を進め、深刻な地政学的再編を促し、世界秩序が描き直されるかもしれない。

この2つの戦争で第3の戦争のリスクも高まっている。台湾をめぐる戦争だ。

アメリカはウクライナとイスラエルに、自国の弾薬や誘導爆弾、ミサイルなどをせっせと運んでいる。アメリカの武器庫が空っぽになるのは時間の問題だ。

それくらいは誰にも、もちろん中国の習近平国家主席にも分かる。台湾の統合を自国の「歴史的使命」と呼ぶ習にとって、この2つの戦争は長引けば長引くほどいい。

バイデン米大統領もそれを承知で、だからこそ今は中国との緊張緩和を探っている。閣僚を次々に中国へ送り込む一方、サンフランシスコで開かれたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議では習との直談判に臨んだ。

G7の首脳は口をそろえて、中国との「デカップリング(関係遮断)」ではなく「デリスキング(リスク低減)」を強調している。

呼び方はどうあれ、このプロセスで起きるのは世界の金融秩序の再編成だ。投資と貿易の流れは変わりつつあり、世界経済は2つのブロックに分裂しかねない。

既に中国とグローバルサウスの貿易量は、対西側陣営よりも多い。将来的な台湾侵攻での制裁リスクに備え、中国は西側との経済的デカップリングを粛々と進めている。

現行のシステムは「ルールに基づく世界秩序」と呼ばれる。いかにも中立的な表現だが、実態はアメリカ中心の仕組みだ。

土台となるルールの大筋を作ったのはアメリカであり、アメリカは内政不干渉などの主要ルールも自国には適用されないかのように振る舞っている。国際法は非力な国には強力だが、強力な国には無力だ。

従来の世界秩序に取って代わる秩序をつくる段になると、紛争が絶えない今の世界情勢は中国に有利かもしれない。

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地球規模で地政学的な再編が起きる事態は避け難い