屋外に置かれたごみ箱の近くには、東西冷戦終結を描いたポスターが捨てられている。建物内では職員が書類をより分け、本を積み重ねながら、四半世紀以上に及ぶロシアの人権活動を記録した資料を整理していた。

ロシア国内有数の民主派や人権運動の拠点の一つとなっているサハロフセンターでは、退去期限が5月2日に迫る中、センターの閉鎖準備が進められている。国内の反体制派スパイを意味する「外国代理人」に指定され、モスクワ市当局から立ち退き命令を受けたためだ。

今できるのは、より良い時代が来る時のために本や資料を保存しておくことだと、サハロフセンターのヴィヤチェスラフ・バフミン代表は言う。

「そのような時代がいつ来るかは、分からない」とバフミンさんは続けた。

ノーベル平和賞を受賞したソ連の反体制科学者、アンドレイ・サハロフ氏にちなんで名付けられたこの施設は、同氏の活動内容のほか、旧ソ連指導者スターリンによる大粛清と強制収容に関する資料を展示。民主派活動家の情報交換の場にもなっていた。

センターのある建物はこれまで、当局から無償で貸し出されていた。だが当局はいま、12月に改正された「外国代理人」への支援を禁止する法律を順守しようとしているだけだと主張している。

「外国代理人」という分類は、冷戦期に「汚名」とされていたもので、官僚体制や監査の対象となる人々に負担を強いる仕組みとなっている。

センターの近くには、サハロフ氏がかつて住んでいたモスクワのアパートに設立されたサハロフ博物館と資料館もあった。だが、2カ月前、これらの施設も同様に閉館した。

ロシア国内の人権団体を巡っては、既に著名な「メモリアル」と「モスクワ・ヘルシンキ・グループ」が解散させられている。ロシア司法省は毎週金曜日、新たな団体をブラックリストに追加している。

ロシア当局は、ウクライナ侵攻を巡って西側諸国と存亡がかかった対立を抱えているさなかにもかかわらず、人権活動家は非愛国的で、敵対する外国政府と密接な関係にあると非難。

プーチン大統領は連邦保安局(FSB)に対し、「社会を分断し、弱体化させようとする違法な活動を特定し、阻止する」よう自ら指示した。

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「記憶は国のもの」