「データ保護ナショナリズムは激しくなる一方だ」と、デューク大学のシャーマンは語る。だが規制が行きすぎれば、外国からの投資や経済成長が打撃を受けるだろう。外国にデータを移送するつもりがない企業も「データ保護のためのインフラを整備しなくてはいけない。

弁護士やコンプライアンスの専門家も雇う必要がある」と、シャーマン。「ある顧客について、データやメールを転送するのにも、煩雑な承認プロセスをクリアしなければならなくなる」

新たな多国間協定や、WTO(世界貿易機関)のような国際機関を新たに設けるべきだという声もある。そうすれば、中国が世界からのデータアクセスを遮断した場合、欧米企業が対抗する助けにもなるだろう。

「国境を越えるデータの流れについて拘束力のある原則を定めるための枠組みが必要だ」と、ダートマス大学経営大学院のマシュー・スローター学院長は指摘する。「今はそういうものが全くない」

進むデジタル世界の二極化

多くの国は、こうした枠組みづくりを支持するだろう。19年の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で日本の安倍晋三首相(当時)は、「信頼ある自由なデータ流通(DFFT)」を唱えた。

OECD(経済協力開発機構)は既に、政府による監視に歯止めをかけ、法執行機関によるデータアクセスを明記した共通原則を策定中だ。米バイデン政権も、データガバナンスに関する米欧作業部会を設置した。

だが、こうした国際ルールがまとまるまでには数年を要するだろう。それまでの間、アメリカは中国の旺盛なデータ収集活動をどのくらい心配すべきなのか。

一部の中国専門家は、現在の中国のデータ政策は、もっぱら国内を念頭に置いたものだと指摘する。「中国当局は、データに莫大な価値がある一方で、安全保障上の弱点になることに気付いている」と、エール大学のサックスは語る。「現時点では、中国はデータ管理に膨大な力を注いでいる」

だが、長期的な危険を警告する専門家もいる。「中国政府が集めている情報の価値は、一見したところでは分からない」と、ポティンジャーは言う。

「山を見て、ただの山だと言うようなものだ。だがその山は金鉱山でもある。その価値は隠れているが、やがて私たちの安全保障や競争力を脅かすものになり得る」

いずれにせよ、デジタル世界は二極化に向けて着実に進んでいるようだ。「現在のインターネットは2つある」と、米クイーンズ大学のフランク・H・ウー学長は言う。

「グレートファイアウォールに守られた中国のインターネットと、アメリカ主導のインターネットだ。そしてヨーロッパやアフリカや中南米の国々は、どちらかを選ぶよう迫られている」

バイデン政権が今後数カ月にやることは、こうした二極化の回避につながるかもしれない。ただし、その流れを加速する恐れもある。

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