一方、国境危機は全く収束する気配がない。

2021年9月までの1年間で、国境で身柄を拘束された不法労働者は170万人以上と、米史上最多を記録した。さらに数千人は、拘束されずにアメリカ国内に入り込んだ。

確かに民主党内には、合法的であれ非合法であれ、移民受け入れを支持する「国境開放論者」がいる。だが、彼らは党内の多数派でない。

「上から目線」が嫌われる

最近の世論調査で最も警戒すべきトレンドは、民主党の重要な支持基盤であるヒスパニック系におけるバイデンの支持率低下だろう。10月に実施された3つの調査では平均43%と、5月の60%と比べて急落した。

その大きな理由の1つは、ヒスパニックの有権者が、不法移民の大量受け入れに反対していることだろう。

「こんな混乱を許すのは国境開放論者だけだ」と、民主党中道派のシンクタンク「サードウェイ」のライアン・プーガレス副政治部長は語る。「(バイデン政権は)このことをきちんと理解する必要がある」

終わりそうで終わらないコロナ禍も、バイデンの支持率低下と大きく関係している。

バイデンは昨年の大統領選で、「経済ではなく、ウイルスを封じる」と主張した。CNN主催の対話集会では、当時大統領だったトランプには、それまでの新型コロナによる死者全員について責任があると非難した。

ところが2021年に入ってからのアメリカの新型コロナによる死者数は、トランプ政権下の2020年の合計を既に上回っている。それでもここ1カ月は新規感染者数が大幅に減っており、今年の冬はさほどひどいことにはならなさそうだという楽観論が、政権内では静かに広がっている。

だが、こうした明るい兆しをバイデンがうまく利用するためには、改善しなければならない点が少なくとも2つある。

1つはその論調だ。

バイデンは、理由にかかわらず、ワクチン未接種者を叱責する傾向がある。

9月の演説では、「われわれは我慢の限界に達しつつある」とし、「あなたがたの(ワクチン接種)拒否は、みんなに犠牲をもたらしている」と述べた。また、アメリカは「未接種者によるパンデミック」に直面していると語った。

こうした「こっちとそっち」的議論は、国内の分断を助長する安易な戦術と見なされる恐れがあると、政権内でも懸念の声が上がっている。

「国民を結束させるメッセージでは全くない」と、ある民主党上院議員のスタッフは激怒する。「アメリカ大統領ではなく、ツイッター大統領(トランプ)の発言のようだ」

ひょっとすると、バイデンにとってもっと重要なのは......
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