台湾の国防安全研究院の蘇紫雲(スー・ツーユィン)は、バイデン政権の対中アプローチは両国関係の「構造的変化」の結果だと言う。一方でアメリカには、自由や民主主義といった価値が直接的な挑戦を受けていると認識がある。

米中両国の間には最近、核バランスという問題も出てきたと蘇は本誌に述べた。

「中国は東風41(大陸間弾道ミサイル)や新疆ウイグル自治区の発射施設を使い、北極上空の近道を通過するようにすればアメリカ本土を迅速に攻撃できる」と蘇は言う。中国海軍の弾道ミサイルを搭載した原子力潜水艦も、台湾とフィリピンの間のバシー海峡を通って西太平洋のフィリピン海に出ればアメリカ本土の脅威になりうるという。

アメリカとイギリス、オーストラリアによる安全保障の新たな枠組み「AUKUS(オーカス)」が発表されたり、インド、オーストラリア、日本、アメリカの4カ国の枠組み「クアッド」の会合が首脳レベルに格上げされたことも、中国の軍事的拡張のみならず、新技術や国際機関の政策決定への中国の影響力に対抗していくアメリカの姿勢の表れだ。

1月の大統領就任以降、バイデンや政権幹部は、競争が激化する中でも中国との協力は可能であり、好ましいと主張してきた。気候変動対策やグローバルヘルスはしばしば、両国が協力可能な分野の例として挙げられた。

<H4>「協力」の抱える矛盾と困難

だが識者は、そうしたバイデン政権の姿勢に懐疑的だ。人権問題や、意見の異なる国々に対する軍事・経済的な圧力といった根本的な問題において、アメリカは中国に立ち向かい続けると公約しているからだ。そもそも、アメリカの矛盾を見つけた時の立場を中国ははっきりさせている。

例えば22日、中国の秦剛(チン・カン)駐米大使はこう警告している。「アメリカは中国の利益を──特に中国の主権や領土的統一に関する重大事項において──無視したり損なう一方で、自国だけの要求や利害のある分野で中国の協力を期待すべきでない」

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