トランプ政権は、イスラエルの首都をエルサレムと正式に認めたときも、イスラエルにゴラン高原の領有権を認めたときも、「現状を追認したにすぎない」と説明してきた。だがこの論理によれば、力ずくの実効支配が、国際法や正当性に基づく領有権を覆す理由になりかねない。

バイデン次期米大統領は、イスラエルとアラブ諸国の国交正常化を支持するとしつつ、そのためにアラブ諸国に法外な「ご褒美」を与えることには慎重な姿勢を示している。モロッコは今回の合意のずっと前から、政治的にも経済的にもイスラエルと緊密な関係を築いてきた。それだけに国交正常化合意は、まさに現実を追認したにすぎない。それよりも、西サハラの領有権についてモロッコの要求を一貫してはねつけてきた国際社会のコンセンサスを崩したことは、モロッコにとっては何より大きな外交的勝利となった。

©2020 The Slate Group

<2020年12月22日号掲載>

【関連記事】
ニューズウィーク日本版 戦争インフレ
2026年4月28号(4月21日発売)は「戦争インフレ」特集。

ホルムズ海峡封鎖でガソリン・日用品が高騰。世界経済への悪影響と「出口」を読み解く

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
※画像をクリックするとアマゾンに飛びます