昨年10月に刊行された『言語化するための小説思考』は10万部を突破。5月に著作『君のクイズ』が映画化されるなど、話題の絶えない小説家・小川哲氏。氏にとって初となるエッセイ『斜め45度の処世術』(CEメディアハウス)が刊行された。
「僕はずっと自分が『普通』だと思って生きてきたのだが、小説家になって自分の考えを文章で書きはじめると、いろんな人に『変わっている』とか『屁理屈』とか『ひねくれ者』とか言われるようになった。(中略)この本には、『僕が世界をどう認識しているか』という視点が記されている」(「はじめに」より)とあるように、独自の「斜め」の視点が、一般的なビジネスマナーや世渡り術とは一線を画した「処世術」となっている。
本書を手に取ると、「無意味な雑談を避ける方法」や「『失敗は成功のもと』ではない」「人間関係を『漫画型』と『小説型』で考える」などといったように、「変わり者」の視点から、わたしたちが普段「常識」と思っていたものが、15度、30度、45度とずらされていく。
結果、著者の思考をお手本に、自分の場合はどうか、不思議と自分の言動を省みる読書時間になる。扱うテーマは多岐にわたるが、いずれも著者の身近な問題を扱っており、わたしたちの生活や日常的に抱えている問題と重なるところが多いだろう。
そんな数あるテーマの中から、今回は現代のビジネスパーソンにとって存在感が増している「AI」について、小川氏に話を聞いてみた。
AIの文章を「面白い」と思ったことが一度もない
――小川さんも日常や仕事の中でAIを使われることはありますか?
調べ物の時は多く使いますね。文献を教えてもらうこともあるし、自分が知りたいことを延々と聞いて調べてもらうこともしょっちゅうです。
――どんなAIを使っていますか?
ChatGPTを使っています。
――最近は格段に使いやすくなりましたよね。
そうですね。こちらの求めている情報が精度高く返ってきます。
――現段階ではAIは道具としての役割が大きいと思いますが、年々進化していって将来的に人間に成り変わるのでは一説もあります。エッセイの中で「僕は生成AIについて、楽観的に考えている」と述べられていますが、そこについて詳しく教えていただけますか?

僕はAIにアイデアを出してもらったり、エッセイを書かせたりして、面白いと思ったことが今まで一度もないんです。それは、やはり「偏り」がないからだと思います。
面白い文章って、書いた人の偏りがあるから面白いのだと僕は思っていて。偏見というと言葉が悪いのですが、出来事をそのまま捉えるのではなく「そうやって捻じ曲げて解釈するんだ」とか、「そういう考え方するんだ」とか、いろんな人の偏ったものの見方が知れるのが、人間の書いている文章の面白さだと思っています。自分が正しいと思っていたことがそうじゃないのかもしれないと気づくきっかけになるというか。
その点、現状だとAIは優等生みたいなことしか言わないので、全然面白くないんですよね。