仲野 ただ、本を書いて思ったのは、ことばの使い方の難しさ。だけども、そこをなんとかしないとどうしようもない。専門用語を他の言葉に置き換えることはどうしても不可能だから、この手の本を何冊か読んで、慣れていってもらうしかないかもしれませんね。

その意味では、この本はこれだけイラストが入っているから取っつきやすいですよね。これ全部、先生が自分で描かれたんでしょ? カラーで本職の人が描いたとかじゃなくて、本格的なイラストじゃないところが、一般の人にはいいんじゃないですかね。あ、これ、褒めてます。念のため(笑)。

小倉 ありがとうございます(笑)。実は最初は全部、写真を入れていたんです。カラフルながん細胞の写真を、いっぱい選んでいたんですよ。私は自分が顕微鏡をのぞいてウキウキするタイプなので、みんなもそうだと思っていたんですが......周りの人とか出版社の人とか、ほとんど全ての方から反対されて、そうか、みんな顕微鏡写真でわくわくしたりしないし、そもそもどこを見ていいのか分からないのだと気付きました。

仲野 私の本は、できるだけ面白く書いてくれと言われたので、かなり脱線した内容になっているんだけど、なんであんなに売れたのかは分からない(笑)。売れると分かっていたら、もっといろいろやりたかったのに、とも思うけど、まぁ、売れたからいいですかね。でも、学者や医者が真面目なことばっかり書いたら、やっぱり一般の人はついてこられないでしょうから、結果的に良かったのかなとは思いますね。

小倉 私も、顕微鏡写真をいっぱい入れたら医学専門書まっしぐらだと言われて、それは困る、と思ったんです。やっぱり、一般の方に読んでもらえるように書いてきましたから。仲野先生の本が売れたおかげで、こういう本が書店の一般書コーナーに置かれるようになったそうで、おかげさまで便乗させていただいています(笑)。

でも、興味のある方は、がん細胞を別の何かに見立てて写真を並べたページを少しだけ残してもらっているので、ぜひ見てみてもらいたいですね!


おしゃべりながんの図鑑――
 病理学から見たわかりやすいがんの話
 小倉加奈子 著
 CCCメディアハウス

※『おしゃべりながんの図鑑』には、この対談とは別の仲野徹氏との対談も収録されている。


こわいもの知らずの病理学講義
 仲野 徹 著
 晶文社
病理学とは何なのか。病理医や病理学者は、一体どんな仕事をしているのか。
ニューズウィーク日本版 台湾有事の新シナリオ
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