こうしてインドの製薬工場に蔓延する不正行為と深刻な状況が暴露され、それによってFDAは問題のある企業の製造した薬の輸入を規制することができた。この結果を見れば、アメリカ向けの医薬品を製造している全ての国で抜き打ち査察を行うべきだと考えるのが当然だろう。

しかし、FDAの判断は違っていた。新薬の価格高騰に対する国民や議員たちの反発は強く、FDAには低価格のジェネリック医薬品をもっと承認しろという圧力がかかっていた。

そして2015年7月、FDAは突然、インドでの抜き打ち査察を打ち切った。その翌年9月にニューデリーで開いた会合では、インドの規制当局や業界ロビイスト、製薬会社幹部らに対し、全ての定期査察について事前通知を行う元のシステムに戻すと正式に伝えた。

それから数年後、あるジャーナリストがFDAの広報官に「なぜ抜き打ち査察をやめたのか」と尋ねた。FDAはこの質問に書面で「試験的プログラムを評価した結果、打ち切りが決定された」とのみ回答してきた。その頃には、もうラルはFDAを辞めていた。しかしインド事務所の責任者として目にした事実の数々は、今も彼の胸に突き刺さっている。

「私はアメリカにいて、あんな薬を飲まされる消費者の顔を見ている。彼らはただの数字じゃないんだ」

<本誌2019年8月27日号掲載>

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