トランプはなぜFRBに利下げさせたいのか。まず、金利を極力低くすることが米経済(および自身の再選)のためになると考えているからだ。利下げのメリットは追加関税で相殺されても完全にゼロにはならないだろう。

利下げは対中貿易政策でもトランプに有利に働く。FRBの利下げでドル安になり、アメリカ国内では中国からの輸入品が値上がりし、逆に世界の市場ではアメリカからの輸出品が安くなる。つまり、追加関税によってFRBが利下げし、その結果ドル安になれば、中国に打撃を与えるには一石二鳥だ。

トランプの対中貿易戦争が思慮深い戦略や明らかな成功への道に裏打ちされたものだとしたら、今回の追加関税は抜け目のない一手とさえ言いたくなるかもしれない。しかし現実には、トランプには思慮深い戦略も明らかな成功への道もない。彼は愚かで今のところ実りのない保護主義のゲームをだらだら続けているだけだ。そのせいで世界経済がリスクにさらされている恐れがある。

©2019 The Slate Group

<2019年8月13&20日号掲載>

【参考記事】「関税マン」トランプが招く貧乏なアメリカ

【参考記事】FRB利下げの意外な理解者は、オバマ時代の議長イエレン

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