ドラマの筋書きを丹念に追い、登場人物の設定を調べ上げ、拷問シーンに至っては歴史資料と照らし合わせる。ここまで熱心に作品を研究する人がいれば、相当なマニアだと思うだろう。ところが、中国共産党系の新聞『環球時報』の場合、その情熱は愛情ではなく怒りから来ているようだ。
同紙は10月26日、日本の人気ドラマ『VIVANT』について、中国人を残忍な悪役として描き、歴史を歪曲していると猛批判した。前日には中国中央テレビ(CCTV)も同様の批判を展開。中国のSNS「微博(ウェイボー)」でも関連する話題が盛り上がっている。嫌いな作品にここまで入れ込むとは、なかなかの熱量だ。
中国が問題視しているのは、堺雅人主演のTBSドラマ『VIVANT』の第2シーズン。2023年に放送された第1シーズンでは、架空の国家バルカを舞台に、日本の秘密情報組織「別班」をめぐる壮大な物語が描かれた。
ところが、今年7月に始まった第2シーズンでは、中国に関係する秘密情報組織「シンシー」が登場。別班のメンバーが拘束され、指を切断されたり、刃物で腹部を刺されたりする残酷な拷問シーンが描かれた。中国は、日本の情報機関が正義の側として描かれる一方、中国人が冷酷な加害者として登場する設定に強く反発している。
『環球時報』が特に問題視したのは、その拷問の描写だ。同紙は、指の切断などの行為が、旧日本軍が中国人に対して行った残虐行為と重なると指摘。歴史上の加害者と被害者の立場を逆転させ、日本人を正義の味方、中国人を残忍な悪役として描いていると主張した。
中国側の批判はドラマの内容だけにとどまっていない。中国の政府系メディアや、それに同調するネットユーザーの間では、『VIVANT』を中国に対する偏見を広める宣伝活動と結び付ける見方も広がっている。
さらに、高市早苗首相が国会で『VIVANT』を録画しており、年末年始に見たいと述べたという、最早ドラマの内容とは関係のないことまで批判の材料となっている。