Leika Kihara

[東京 27日 ロイター] - 日銀の黒田東彦前総裁と若田部昌澄前副総裁が相次いで著書を出版した。「アベノミクス」の大規模金融緩和を主導した2人だが、日本経済が低成長とインフレが併存する局面に入る中、金融政策のあり方を巡って対照的な見解を示している。

黒田氏は今月出版した『独白 デフレとの闘い』(光文社)で、現在の日銀が進める金融政策の正常化を支持し、利上げ継続に理解を示した。一方、若田部氏は9月に出版した『自由な経済と強い国家 サナエノミクスとは何か』(日経プレミアシリーズ)で、拙速な利上げに警鐘を鳴らし、需要の押し上げを引き続き重視するよう政府に促した。

黒田氏は、利上げペースが速すぎれば経済の停滞を招く恐れがある一方、遅すぎれば金融政策の正常化を完遂できなくなる可能性があると指摘。植田和男現総裁は2023年4月の就任時から任期中の正常化を念頭に置いていたと推測した上で、「今後は金融政策決定会合のたびに0.25%の利上げをするべきかどうかを検討し、政策金利を中立金利に近づけていくに違いない」と記した。

一方、リフレ派として知られ、高市早苗政権下で経済財政諮問会議の民間議員を務める若田部氏は、現在の金融政策にはより優先すべき課題があると考えている。

「現在の日本経済は、インフレが復活しつつあるとはいえ、その半分くらいはコスト・プッシュによるものであり、実質成長は依然として弱い」とし、「必要なのは、総需要を積極的に支えることで、結果として供給能力を引き上げるという戦略である」と主張した。

黒田氏は2013年、2年間で物価上昇率2%の目標達成を掲げ、大胆な金融緩和策を導入した。しかし目標は達成できず、2023年の任期満了まで大規模緩和を続けた。

後任の植田総裁は、労働市場の逼迫やウクライナ戦争に伴うコスト上昇を背景に消費者物価が高止まりする中、政策正常化へとかじを切った。

日銀は植田体制の下でこれまで6回利上げを実施し、直近の9月会合では政策金利を31年ぶりの高水準となる1.25%へ引き上げた。10月29─30日の金融政策決定会合では、黒田前総裁が掲げた物価目標2%への到達を宣言する可能性がある。

黒田氏は著書で自身の任期を振り返り、分かりやすい情報発信によって日本のデフレマインドを払拭しようとしたと説明した。日銀の政策運営の柔軟性を損なうリスクを負いながらも物価目標の達成期限を設け、「私はあえて退路を断った」と記した。賃金が上昇し始めた2024年ごろ、日本がデフレから完全に脱却したとの確信を持つようになったという。

2018─23年に日銀副総裁を務めた若田部氏は、今回の著書で高市氏の経済政策「サナエノミクス」を論じた。植田総裁が任期満了を迎える2028年まで高市政権が続けば、若田部氏が後継候補の一人になるとの見方もある。

若田部氏は「物価上昇はコスト・プッシュ要因が強く、実質GDP(国内総生産)がマイナス成長なのに日銀が利上げを行うとしたら、よほど国民に対する説明が必要であろう」と書いた。

その一方で、高市氏が掲げる「責任ある積極財政」と成長戦略が投資や資金需要を刺激し、日本の中立金利を押し上げれば、利上げが可能になるとの見方も示した。

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