民俗学とは、ドイツで生まれ、日本では柳田國男さん(1875〜1962)や折口信夫さん(1887〜1953)らが主導して民間信仰の研究などで大きな成果を上げてきた学問です。民俗学は、公式的な文化に対する「非公式的な文化」や、近代的な意味での合理性を持たない文化を研究対象にします。この学問の特徴は、一見非合理に思われるものの中に人間の本音や別の視点からの合理性を見出し、近代の生き方を相対化する「オルタナティブなもの」を取り出してみせるところにあります。そして、それによって私たちの未来の生き方をより豊かに構想するための視野を広げてくれる学問なのです。(「はじめに」より)

『恐怖の民俗学』の著者である民俗学者・島村恭則氏は、本書の冒頭で民俗学をこう説明している。

そして、民俗学を探求していくうえで欠かせないのが「恐怖」だ。ただし、ここでいう恐怖の幅は広く、お化け屋敷で悲鳴をあげるような感情のみならず、大自然の猛威や不条理な死など、人間の知性や論理が通用しない「見えない闇」に対して私たちが本能的に抱いてきた「原始的恐怖」も含まれるという。

『恐怖の民俗学』

例えば、「恐怖」を代表する存在として広く知られているもののひとつが「カッパ」や「一つ目小僧」などの妖怪だろう。妖怪とは、日常の秩序からはみ出す自然の脅威を「怪しい」「異常だ」と“人間優位”の立場でジャッジし、命名・分類したものを指すそうだ。

著者はそれを人間の「上から目線」と表現している。

妖怪はもともと「精霊」だった?
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