Rajesh Kumar Singh

[シカゴ 23日 ロイター] - 米航空各社は、座席を埋めるために運賃を値下げするのではなく、空席を抱えたまま運航することを以前よりもためらわなくなっている。燃料費が急騰する状況でも、運賃政策と運航計画を厳格に管理することで利益率を守ろうとしているためだ。

今年2月に始まった米国とイスラエルによる対イラン戦争以降、ジェット燃料価格が約90%上昇したため、業界の利益は圧迫されており、主要航空会社の一部は業績見通しの引き下げを余儀なくされている。そうした中でデルタ航空、ユナイテッド航空、アメリカン航空、サウスウエスト航空、アラスカ航空の経営陣はそろって、旅客数の拡大よりも利益率の維持を優先する姿勢を強く打ち出した。

アメリカン航空のデボン・メイ最高財務責任者(CFO)はロイターに「燃料価格が高いままであれば、ある程度の利益を確保するために、引き続きイールド(旅客1人が1マイル移動するごとに得られる収入)を引き上げていかなければならない」と語った。

米労働省のデータでは、9月までの7カ月間の航空運賃は前年同期比で平均約23%上昇し、同期間の消費者物価全体の上昇率3.6%を大きく上回る伸びとなった。

それでも航空会社はさらなる値上げを模索している。JPモルガンは、ジェットブルー航空が21日に国内線運賃を片道10ドル引き上げたと明らかにした。これは前週にユナイテッド航空主導で実施された運賃引き上げに続くもので、サウスウエスト航空も追随した。

<異なるアプローチ>

航空会社は長年にわたり、運賃水準と搭乗率のバランスを取ってきた。しかし燃料費の高騰によって、値引きを行って座席を埋めるよりも、搭乗率をある程度犠牲にしてでも運賃を維持しようとする意向が強まっている。

ユナイテッド航空のアンドリュー・ノセラ最高商務責任者は、今週の決算説明会で、同社のレジャー旅客向け搭乗率は第3・四半期に1.3%ポイント低下したと明かした。

ノセラ氏は「運賃上昇によって需要に一定の弾力性が生じたことを示している」と認めながらも「その程度なら通常のビジネスの範囲内だ」と述べた。

アメリカン航空も第3・四半期に搭乗率が低下した半面、旅客イールドは18%超上昇。メイ氏は、この結果は意図的な判断によるものだと説明した。

デルタ航空のエド・バスティアン最高経営責任者(CEO)は「利益率を重視して事業運営を行っている」と語っている。

デルタ航空、ユナイテッド航空、アメリカン航空、サウスウエスト航空、アラスカ航空の5社合計では、第3・四半期の旅客収入が前年同期比で約88億ドル(18%)増加した一方、旅客輸送量の伸びは1%未満にとどまった。

このかい離は、収入拡大が旅客数の増加ではなく、1人当たり収入の増加に依存していることを表している。高単価のプレミアム座席の販売拡大や利用客構成の変化も増収に寄与した。

米運輸保安庁(TSA)のデータでは、第3・四半期に空港で保安検査を受けた人数は前年同期比2.9%減少しており、高騰する航空運賃が旅行需要を抑制し始めている可能性がうかがえる。供給能力の制約や格安航空会社スピリット航空の運航停止も旅客数の減少要因となった。

ただ航空会社各社は需要の底堅さを強調する。

サウスウエスト航空のボブ・ジョーダンCEOは、今年最初の9カ月間の平均運賃が約22%上昇したことを報告した上で「運賃上昇によって需要が落ち込んでいるわけではない」とアナリスト向け説明会で述べた。

<供給能力を管理できるか>

ただし、過去最高水準の売上高でも燃料費高騰による利益圧迫を完全には吸収できていない。

米エネルギー情報局(EIA)のデータに基づくと、メキシコ湾岸地域のジェット燃料スポット価格は、戦争開始前の2月には1ガロン当たり2.43ドルだったが、今月20日には4.63ドルへ上昇した。

デルタ航空とサウスウエスト航空は通期利益見通しを引き下げ、アメリカン航空は旅客収入が大幅に増加しているにもかかわらず、通期では赤字を見込んでいる。

しかも業界の運航計画によれば、航空各社は供給座席数を増やす方向にあり、乗客獲得競争が激しくなる見通しだ。一方で燃料価格は高止まりするとみられており、今年実現した大幅な運賃引き上げを来年も繰り返すのは難しくなると予想される。

業界団体エアラインズ・フォー・アメリカによると、米主要6社の国内線供給能力は、第4・四半期に前年同期比3.0%増、来年第1・四半期には同3.8%増となる見通しで、第3・四半期の0.2%増から大幅に加速する。

こうした状況を受け、各社は事業拡大計画を慎重に見直し始めている。アメリカン航空は来年の成長ペースを大幅に鈍化させる方針で、メイ氏は、新規便の追加が運航コストを上回る収益を生み出せるかどうかを再検討していると明らかにした。

サウスウエスト航空も、収益性を犠牲にしてまで規模拡大を追求しない方針を示している。またユナイテッド航空の経営陣は、各社が公表している来年の供給計画がそのまま実現するとは限らないと警告している。

供給抑制が続けば、高めの運賃水準を維持しやすくなる可能性がある。しかし、運航を減らせば座席当たりのコストは上昇しやすく、さらに値上げを進めれば、既に大きな負担増を受け入れている旅行者の需要を冷やすリスクもある。

それでも航空会社の経営陣は、供給能力を規律ある形で管理することで、これまで実現してきた運賃引き上げ効果を維持できると考えている。メイ氏は「このようなイールドの上昇は十分に持続可能だと考えている」と言い切った。

Reuters Copyright (C) 2026 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。