Tim Reid

[ワシントン 25日 ロイター] - 米国で11月3日に実施される中間選挙では、トランプ大統領の任期の最後の2年間に連邦議会をどの政党が支配するかが決まる。

現在の勢力は下院が共和党218議席、民主党214議席、上院が共和党53議席、民主党47議席となっている。民主党が多数派を奪還するには、上院と下院でいずれも4議席以上の純増が必要となる。世論調査では民主党が下院で多数派を奪還する可能性が高い一方、上院は依然として接戦となっている。

トランプ大統領の支持率は政権発足以来最低水準に低下しており、今回の選挙はワシントンの勢力図を大きく変える可能性がある。ただ、民主党が上下いずれか、あるいは両院を制しても、トランプ氏は拒否権と広範な大統領権限を維持するため、民主党による大規模な法案成立能力は制約を受ける。

ロイターが取材したアナリストやストラテジスト、エコノミストらは、選挙結果にかかわらず、2027年には連邦債務上限引き上げや連邦政府予算を巡る対立が起きる公算が大きいとみている。

選挙結果の主なシナリオと、それぞれがトランプ政権、議会、経済に及ぼす影響を以下に記す。

(1)民主党が下院を奪還、上院は共和党維持 下院の議席差が5-20議席の場合

・民主党は下院委員会の主導権、召喚状発付権限、トランプ政権に対する調査権を得る。

・議会から召喚を受けた政権当局者が召喚に応じない可能性がある。トランプ氏が任命した司法省指導部が強制執行に動く可能性は低いためだ。

・トランプ氏は関税、移民、外交政策に関する広範な権限と拒否権を維持する。ベセント財務長官は10月20日、民主党が下院を支配したとしても、下院がトランプ氏の政策を阻止できる余地は「極めて小さい」と述べた。

・上院の共和党は民主党の大半の主要政策を阻止できる。

・民主党は医療、人工妊娠中絶の権利、住宅、人工知能(AI)データセンター問題などに関する「メッセージとして世間に訴えかける」法案を可決できるものの、成立する可能性は低い。

・2027年には債務上限や予算を巡る対立、政府機関閉鎖の脅威が浮上するとみられる。

<影響> 民主党は公聴会や召喚状を通じて政権を追及できるが、政策を大きく変えることは難しい。アナリストらは、市場や投資家を動揺させる債務上限問題が夏場に表面化する可能性が高いとみている。トランプ氏は過去2年間と同様、議会をほぼ無視し、大統領令を活用して政策遂行を続ける見通しだ。

(2)下院で民主党が議席差21-40で多数派の場合

・民主党指導部は造反議員への対応余地が広がり、党の政策を通しやすくなる。

・新人議員が増え、とりわけ急進派の台頭によってトランプ氏の弾劾を求める声が強まる可能性がある。

・世論の不支持が強い関税政策やイラン戦争を巡り、一部の共和党議員がトランプ氏と距離を置く可能性もある。

・予算や債務上限を巡る交渉で民主党の発言力が強まり、共和党から譲歩を引き出しやすくなる。

・医療、中絶の権利、生活費問題に関する法案をより容易に可決でき、上院共和党に難しい判断を迫ることができる。

<影響> 民主党はインフレ対策や大統領の戦争権限の制限、データセンター建設に反対する法案を可決する公算が大きい。しかし上院共和党による法案の否決やトランプ氏の拒否権が壁となり、状況を大きく変える法案の成立は依然として難しい。債務上限問題も続く見込みだ。

(3)民主党が下院を奪還、上院は両党とも50議席の場合

・上院での採決が50対50の場合、バンス副大統領が決定票を投じることができるため、上院の主導権は共和党が維持する。

・上院での採決が僅差となった場合、ペンシルベニア州選出の民主党議員ジョン・フェターマン氏や一部の穏健派共和党議員など、党方針に反する投票も辞さない少数議員が採決結果を左右する可能性がある。

・両党とも造反を許容する余裕がない中、少数の上院議員に法案内容を変更したり審議を遅らせたりする能力が与えられる格好となるため、債務上限や予算を巡る交渉はさらに不透明になる。

<影響> 上院では党の方針に縛られない少数の議員が財政、司法、政治を巡る争いの行方を左右する膠着状態となる可能性が高い。トランプ氏はバンス氏の決定票により、指名した高官人事の承認を得やすく、関税、移民、外交政策への制約も引き続き小さい。

(4)民主党が下院・上院とも制し上院で議席差2の場合

・上院は裁判官や閣僚、大使の人事の承認権を持つため、上院の支配は下院よりも大きな意味を持つ。

・民主党が上院委員会と議事運営を掌握する。

・民主党はトランプ氏の司法指名の多くを阻止する可能性が高い。連邦最高裁判事に欠員が出た場合には、2028年の大統領選後まで後任人事を遅らせる可能性がある。

・一方、共和党は来年1月に新議会が発足する前に人事承認を急ぐとみられる。

・ただし、上院ではフィリバスター(議事妨害)を打ち切るために通常60票が必要であり、トランプ氏も拒否権を持つため、大型法案の成立は依然として容易ではない。

・民主党は債務上限や予算を巡る交渉で有利になるが、財政面の対立リスクは残る。

<影響> トランプ氏の人事への強力なけん制が可能になるが、僅差の議席数、フィリバスター、トランプ氏の拒否権によって立法面での成果は限定される。

(5)上院で民主党が議席差4-6で多数派の場合

・民主党指導部は個々の議員の意見に左右されにくくなる。

・民主党は関税、データセンター、医療、生活費、大統領の戦争権限制限などに関する法案を可決し、トランプ氏に拒否権の行使を迫る可能性が高まる。

・拒否権が行使されれば、2028年の大統領選で民主党の選挙戦略の策定に役立つとみられる。

・司法人事承認は大幅に停滞する可能性がある。

<影響> 民主党は有権者の関心が高い物価高、医療費、データセンターといった問題に対応する法案を通しやすくなるが、トランプ氏は依然として大半の重要法案を阻止できる。有権者は民主党に対し、トランプ氏に反対するだけでなく、経済問題への対応を求める公算が大きい。トランプ氏は経済運営の責任を民主党と共有させることができるようになり、経済問題や物価高を民主党の過失によるものだと主張する可能性もある。

(6)上院で民主党が議席差8以上で多数派の場合

・民主党は有権者がトランプ政権前半の政権運営を否定したとの明確な民意を主張できる。

・政府予算や債務上限を巡る交渉で最も有利な立場に立つ。

・ただし、フィリバスター阻止や拒否権の覆し、弾劾裁判での有罪認定に必要な票数には依然として届かない。

<影響>民主党の交渉力は高まるが、トランプ氏の拒否権やフィリバスター、さらに経済運営責任の共有によって、議会運営上の制約は残る。

(7)共和党が上下両院の支配を維持

・下院で改選を迎える共和党議員の多くが議席の維持に苦戦していることから実現の可能性は高くないが、このシナリオも排除できない。

<影響> トランプ氏と共和党は、残り任期2年間に向けた新たな信認を得たと主張するだろう。ワシントンでの一体的な統治体制の下、トランプ氏は議会の制約をほとんど受けず、司法指名やその他の人事を進めることが可能になる。予算や政府機関閉鎖、債務上限を巡る大規模な対立のリスクも低下するとみられる。

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