これにより属人的な評価のばらつきを抑え、管理者間の評価基準の標準化にもつながった。下垣氏もこのAI活用を称賛する。
「AIを使ってお客様の言葉を丁寧に拾い上げ、満足度向上やスキル支援に向かっている点は、働く側の環境も同時に改善する素晴らしい事例ですね」
Renxaのデータによれば、SV1人あたりの教育用ログの確認時間は60分から15分に短縮された。また、SV1人あたりの月平均残業時間も、比較対象期間において17時間以上減少した。
「管理者が残業をしなくなった分、人と向き合う時間が増え、次世代の育成にも時間を割けるようになりました。AIが客観的な評価やバックオフィス業務を担うからこそ、人はより『ホスピタリティ』に注力できます」(坂本氏)
下垣氏もマクロな視点から同調する。「日本の労働人口が減少する一方で、インバウンドや外国人材は増加していきます。働く人が減る中で需要が増える以上、テクノロジーで生産性を上げるしかありません。しかし、AIが情報を要約してくれても、それを『どう使うか』は人間の仕事。情報を覚える労力が減った分、人間ならではの役割を一度見つめ直す時期に来ています」
「多言語共生社会」を見据えた、社会サービスインフラを目指して
両社のシナジーは、「多言語共生社会」という社会課題の解決へも広がる。日本で働く外国人材が増える中、インフラ契約や生活トラブルの解決には大きな言語の壁が存在する。Renxaが展開する不動産管理会社の業務負担軽減と、在留外国人と地域社会の共生を支援する生活支援サービス「Global Support Desk」でも、ZoomのAIを活用している。
「Zoomを使えば、外国語の通話ログをAIが日本語に翻訳してくれます。外国籍社員に対しても的確にPDCAを回せるようになりました」(坂本氏)
この通話データの解析から、新たな事業の種も生まれている。「手続きをサポートしたお客様から、後日『子どもが熱を出したが病院の予約ができない。代行してくれないか』と頼られるケースがありました。日本での生活に不慣れな外国人にとって、母国語で対応できるスタッフは心強い存在です。こうした生活上の困りごとをパッケージ化すれば、生活者支援はもちろん、外国人材を雇用する企業の人事・総務の負担を軽減するB2Bサービスとしても展開できます」(坂本氏)
今後のテーマは、コンタクトセンターとリアル店舗のシームレスな接続だ。「例えば携帯ショップに、母国語でのサポートを求める外国人や専門的な案内が必要なシニア層が来店した際、店頭スタッフだけでなくiPad等で裏の専門スタッフと接続できれば、十分なサービスを提供できます。テクノロジーを活用し、CXとEXの双方を高め続けたいですね。また、特に近年頻発する災害時に痛感していますが、言葉の壁によって災害時に必要な情報を十分に得られない外国人の方々をサポートするような、社会インフラとしてのサービスも作っていければと考えています」(坂本氏)
「Zoomでは現在、日本語で話した内容をそのまま相手の言語の音声で届ける『speech to speech』機能の実装を進めています。当社の言語サポートを活用し、Renxaさんには災害時も含めた日本のマルチランゲージサポートの要になってもらえたらいいですね」(下垣氏)
AIが作業を担い、人がホスピタリティを体現する。RenxaとZoomの協業は、テクノロジーと人間が共存し、社会課題を解決していくための鮮やかなモデルケースになり得るだろう。