Parisa Hafezi

[ドバイ 20日 ロイター] - イランは11月3日の米中間選挙を前にトランプ米大統領の政治的立場を弱めるため、米国との交渉を意図的に引き延ばす戦術を採用している。複数の政府高官らが明らかにした。軍事行動再開への懸念や米国への根強い不信感から、戦争終結に向けた早期合意には消極的になっている面もある。

匿名を条件に取材に応じたイラン政府高官3人と関係者1人によると、イランはトランプ氏が膠着状態打開のため、いつでも再び軍事攻撃に踏み切る態勢だとの見方を強めている。

高官の1人は「イランは米国との戦争終結合意ではなく、米国とイスラエルによる新たな攻撃への備えを進めている。最高指導部はトランプ氏に政治的勝利を与えない決意だ」と語った。

テヘランの政治アナリスト、サイード・レイラズ氏は「交渉を長引かせることで、イランは違法な行為をすることなく米国の選挙に影響を与えている」と指摘した。

米国の世論調査では、ガソリン価格高騰を懸念する有権者が与党共和党に厳しい判断を下す可能性が示唆されており、トランプ氏の支持率は過去最低水準に低下している。

トランプ氏は繰り返し、中間選挙後に原油価格が下落すると主張しているものの、戦争終結や世界の重要なエネルギー輸送路であるホルムズ海峡の再開に向けた具体策は示していない。

高官らによると、イランはトランプ氏の政治的利益につながる譲歩を拒んでおり、中間選挙前に大きな進展が実現する公算は乏しい。

米国はイスラエルの要請を受け、イランの核開発計画を交渉開始時点から議題にすることを求めている。一方イランは核協議に先立ち、「7日間計画」に盛り込まれた条件の履行を要求している。ホルムズ海峡を巡る影響力を手放す考えも示していない。

イランはカタールを通じた仲介交渉で、米国が海上封鎖解除、原油輸出制限緩和、凍結資産解放、全面的な敵対行為停止に応じることを条件に、7日以内にホルムズ海峡を再開する案を提示した。ただし、海峡の管理権はイラン側が維持するとしている。

アラグチ外相は18日、この提案は依然有効であり、仲介者を通じた協議が続いていると述べた。

ただイラン側は、過去の交渉が軍事行動によって行き詰まった経験から、米国は外交的解決に誠実に取り組まないとみている。

こうした中でイランは米中間選挙まで、戦争と平和の中間的な状態を維持することでトランプ政権への圧力を継続しつつ、外交への意思を示し続ける考えだ。

トランプ氏は11月3日まで再びイランを空爆しないとしているが、イラン当局者らは爆撃がいずれ再開されるとの警戒を解いていない。

ワシントンのシンクタンク、中東研究所のアレックス・バタンカ氏は、イラン指導部がトランプ氏に政治的打撃を与えようとしているのは明らかだと指摘。「イランはトランプ氏が体制転換を目指しており、イスラエルのネタニヤフ首相のイラン政権打倒路線に同調している、と考えていることが基本的な問題だ」と述べた。

一方で合意を急がず交渉を継続するイランの戦術には大きな代償も伴っている。

先行き不透明感は低迷するイラン経済をさらに圧迫し、国民の不満も増大。年初には反政府デモの拡大を受けた治安部隊の弾圧で数千人が死亡した。9月のインフレ率は前年比73.6%に達し、米国が7月に海上封鎖を再開して以降、イラン通貨リアルはドルに対し約35%下落した。

エネルギー分析会社ボルテクサによると、イランの海上原油輸出量は9月初旬の日量平均23万バレルから、9月第2週にはゼロとなり、10月5日時点でも回復していない。

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