Francesco Guarascio Phuong Nguyen
[ハノイ 7日 ロイター] - ベトナムの銀行が株式売却によって来年末までに総額70億ドル程度を調達する見通しであることが、公開資料とフィッチ・レーティングスのリポートに基づくロイターの試算で分かった。フィッチによると、ベトナムの銀行業界にとって過去最大規模の調達になる可能性が高い。
ベトナムは経済が高成長を続けて資本需要が拡大している。銀行による大規模増資は海外投資家にとって、規制が厳しいベトナムの銀行セクターへの出資を拡大する好機となる。
共産党一党支配のベトナムは、今年7-9月期に10%程度の経済成長を記録し、銀行業界の成長ペースはアジア最速に属するが、これまで外資の参入には制限が設けられてきた。外資の出資比率は合計で30%を上限とし、個別の出資比率は20%に制限されているほか、海外からの借り入れにも厳しい上限が設けられている。
しかし最高指導者トー・ラム共産党書記長は大型インフラ投資を通じて経済成長を加速させようとしており、政策当局はこの数カ月、外資の受け入れに前向きな姿勢に転じている。国内で資金調達が逼迫する中、拡大する信用需要に対応するには外国資本の参加を増やす必要があるとみているためだ。
海外からの借り入れ上限も今年、11%引き上げられて61億ドルとなり、今後さらに拡大する可能性がある。国内の3行については、外資の出資上限を49%まで引き上げることが認められた。また、株式市場改革を受けて、指数算出会社FTSEラッセルは先月、ベトナムを「新興国」市場へ格上げした。国際金融センターを設立する別の計画も、外国資本の流入拡大につながると期待されている。
ベトナムの銀行と出資協議を行っている外国金融機関2社の関係者2人は、ベトナムでの事業拡大の理由として、金融資産投資による収益や、保険などの商品を通じたベトナム消費市場へのアクセス拡大を挙げた。
ホーチミン市のホアセン大学で金融を教えるクイン・グエン氏は、ベトナムが銀行への外国資本の受け入れを拡大しているのは、「次の成長局面でどのように資金を調達するのかについて、考え方を変え始めている」ためだと指摘した。ただ、こうした動きは選択的なもので、全面的な自由化を意味するものではないとくぎを刺した。
<株式売却と海外調達>
銀行の株式売却の計画を受けて外国投資家は関心を強めており、クイン氏は「特にベトナムに既に精通し、さらなる投資拡大を検討している戦略的投資家の関心が強い」と指摘する。
ロイターは9月、三井住友銀行(SMBC)がベトナムの提携先VPバンクの出資比率を15%から20%に引き上げる方向で協議しており、VPバンクは現在の市場価格で約5億6000万ドル規模の第三者割当増資を計画中だと報じた。VPバンクについては、外資出資上限を49%まで引き上げることが認められている。
ベトナム銀行最大手ベトコムバンクも、年末までに株式の6.5%を売却する計画を明らかにしている。現在の株価に基づけば、約12億ドル規模の取引となる。4月に開かれたベトコムバンクの株主総会の議事録によると、現在15%を保有する筆頭外国株主のみずほ銀行は「出資比率を引き上げる可能性がある」という。みずほ銀行はコメントを控えた。
ベトナム第2位の銀行であるBIDVは3月、数十の投資家に約3%の株式を売却した。公開資料によると、来年末までにさらに約11%を売却する計画で、総額は約14億ドルとなる見込み。
BIDVの筆頭外国株主である韓国のKEBハナ銀行は、最初の株式売却には参加しなかったが、新たな売却計画に参加するかどうかを検討していると、同行の広報担当者は述べた。
「ベトナムが成長軌道を維持できるのであれば、将来的に小規模銀行との提携につながる機会があるとみている」と、フィッチのウィリー・タノト氏は述べた。
HDバンクは、来年末までに10.7%の株式を売却する計画を明らかにしている。同銀は、ベトナム最大の民間航空会社ベトジェットとつながりがある民間銀行で、大口の外国人株主は現在おらず、外資の出資比率を49%まで引き上げることが認められている。
これとは別に、ベトナム最大手の民間銀行の1つであるテクコムバンクは、外国金融機関との間で株式売却について協議していると、ロイターが8月に報じた。
一方、S&Pグローバルの提携先であるフィンレーティングスによると、ベトナムの銀行や企業は今年、総額53億ドルの海外借り入れ計画を明らかにしている。
ベトナム財務省はまた、2014年以来となる海外でのソブリン債の発行を検討している。銀行も海外債券の発行を検討しており、新たな規則の下では、大都市などの地方自治体も債券発行を通じて国際資本市場から資金を調達できる可能性がある。
<株式売却はさらに拡大か>
銀行による株式売却が相次いでいる背景には、ベトナムが2030年までに世界的な銀行資本規制「バーゼル3」のより厳格な要件へ移行する中、自己資本を強化する必要に迫られていることがある。融資が急速に伸びていることで、自己資本強化の必要性は一段と高まっている。ムーディーズが支援するVISレーティングは、急速な融資拡大によって、銀行が損失を吸収するための資本バッファーがさらに悪化する可能性があると指摘している。
政府が2030年まで毎年少なくとも10%の経済成長を目指していることも、特に不動産部門を中心とする資産価格の上昇を促している。ベトナム中央銀行の8月の内部報告書によると、不動産向け融資は融資総額の約4分の1を占め、この分野で不良債権が急速に増えている。
フィッチは、資本調達が「大半の銀行で自己資本比率を大幅に改善する可能性は低い」と指摘している。新たに調達した資金が新規融資にすぐに振り向けられるとみられるためだ。
ただ、こうしたリスクは新たな投資機会にもなり得る。フィッチは「今後数年間に、さらに大規模な資本注入が必要になる可能性が高い」としている。