「もったいない」が出発点の循環モデル

構想の原点は、代表取締役社長の長門貴氏が抱いた素朴な疑問だった。植物にはタンパク質をはじめとする有用成分があるのに、十分に抽出・活用されていないのは「もったいない」というもの。未活用の植物資源を全て使い切れば、単なるアップサイクルにとどまらず、ゼロエミッションにつなげられると考えた。

食料危機やタンパク質危機、エネルギー問題、廃棄物問題などの解決につなげたいとの思いから、静岡大学に研究協力を持ちかけ、基礎研究を進めるアカデミアと連携。事業化に向けて走り出した。

大きな壁となったのが、植物の葉肉と葉脈を分離する技術だった。思うように分離できず、長門氏自ら実験を重ねた。ホームセンターで購入したバケツを使って植物を溶液に浸すなど、手作業で条件を探った。植物に直接触れて重ねた試行錯誤が、現在の装置開発につながっている。

同社のもう1つの強みがデータ活用だ。植物原料の基礎研究データ、酵素の最適条件、カーボンクレジットの算出、市場データ、消費者の反応までをデータ化し、AIで解析してデジタル運用する。

データで植物資源の価値をひらく
蓄積されたデータを新たな価値として提供することで、顧客の事業判断や新素材開発を支えることに貢献

植物資源は複数の成分や素材、ビジネス価値を生むため、1社だけで循環が完結することはない。食品、農業、エネルギーなど異なる業界の企業が参画して初めて「使い切る」循環が成立する。そのため同社は、Use-It-Allプラットフォームを利用する企業を増やし、それぞれの課題を解決しながら循環に参加できる仕組みを広げていく考えだ。

2026年は東海地方で実証を進め、27年には全国展開を目指す。さらには海外展開に向け、インド工科大学ハイデラバード校をはじめとするアカデミアや地域企業との連携を進め、現地の植物資源を活用した循環モデルの研究・事業化を検討するという。

資源不足が叫ばれる時代に必要なのは、新たにつくったり、生み出したりすることだけではない。今あるものを使い切る、追加の環境負荷を生まない──S-Bridgesの取り組みは、循環経済の実現と事業の持続可能性を両立する1つのあり方を提示している。

*CELL BREAKERはS-Bridges株式会社の登録商標です。

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