※“A picture is worth a thousand words.”――1枚の写真には千の言葉の価値がある。世界の今を鋭く捉えるドキュメンタリーから、感性を刺激する芸術的なアプローチまで。連載「Picture Power “世界を物語る”写真の力」からお届けします。 

アラビア半島を対岸に臨む東アフリカのジブチは、紅海への狭い難所で「涙の門」を意味するバベルマンデブ海峡に面している。ここは、世界の注目などめったに集まらない場所だった──船舶が攻撃され、保険料が上昇し、石油や天然ガスの輸送ルートが不安定になって世界経済が揺らぎ始めるまでは。

写真家パトリック・ワックは、静かなる要衝ジブチを見つめる。この国はこれまで、地理的位置を最大の政治的・経済的資源に変えてきた。欧米、中国、湾岸諸国の利害が、軍事基地や港湾、物流拠点、インフラ事業を通じてこの地に集まっている。

特に際立つのが、これほどの戦略的重要性とは懸け離れた現地の日常の姿だ。要衝ジブチの権力や資金は軍事施設や港湾などの「壁」の向こうに隠され、周囲では砂漠や市場、移民街で脆弱な経済と人々の営みが続く。

世界の莫大な利益と国民の貧困が交わることなく共存するこの国では、至る所で独特の風景が広がっている。

Photographs by Patrick Wack

パトリック・ワック :
1979年生まれ、パリ郊外で育つ。フランス、アメリカ、スウェーデンで経済学などを学んだ後、ベルリンで得た仕事を辞め、独学で写真を習得。少数民族への抑圧、紛争後の復興、環境問題などをテーマに、2006〜17年は上海で、その後はモスクワ、パリへと拠点を移して活動中

【第1041回】

picture power 写真の力
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