[ローザンヌ(スイス) 23日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)のチーフエコノミストであるフィリップ・レーン専務理事は、今年のエネルギー価格高騰によるインフレ高進を受けても、賃金への大きな上昇圧力は見られていないとし、急速な物価上昇が定着する恐れがあるとの懸念を打ち消した。
レーン氏はスイスの大学での講演で、「エネルギーショックに対する大きな反応は見られない」とした上で、「人々は生活費が予想以上に上昇していることを認識している一方で、多くの企業が『中国に競争で負けている。あまりに高い賃上げを求められるなら、いつでも人工知能(AI)を導入できる』と考えている」状況が背景にあるとの見方を示した。
8月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値は、エネルギーコストの上昇を背景に再び3%を超えた。一部のエコノミストは、中東情勢の緊迫化を背景に燃料・ガス価格がここ数週間で急騰していることから、年末までに4%に達するとみている。エネルギー価格の急騰を受け、市場はECBが6月と9月の利上げに加え、さらに3回から4回の追加利上げに踏み切るとの見方を織り込んでいる。
ただ、市場データから上乗せ金利(リスクプレミアム)を除けば、政策金利のピークは来年に3%をやや上回る水準に達し、同年末までに低下する見通しで、実際には追加利上げ2回分しか織り込まれていないとレーン氏は指摘。一方、エネルギー価格は来年半ばまでECBの「不利なシナリオ」に沿って推移し、その後にようやく基準シナリオの水準に戻ると見込まれており、これがリスク要因になっていると認めた。
レーン氏はまた、天然ガスの在庫不足もリスクだと指摘。エネルギー企業が夏場にガスの備蓄を先送りしたため、備蓄水準は70%にとどまり、過去の平均を16%ポイント下回っている。