Stefano Rebaudo Harry Robertson Shashwat Chauhan

[ロンドン 17日 ロイター] - 中東での戦争に起因するエネルギー価格と世界的な借り入れコストの上昇により、各国の経済・市場はますます高インフレ・低成長という厳しい時期に向かう可能性がある。

今のところ、株価は最高値圏を維持し、人工知能(AI)ブームに伴う膨大な支出のおかげで経済は底堅さを保っている。原油やガスの価格は上昇し、国債利回りは世界的に金融危機以来の高水準に達したが、その動きは秩序立っている。

しかし、脆弱性が忍び寄りつつあることを示す指標は増えている。

借り入れコスト、金利、エネルギー価格の上昇について、LGIMのマクロ戦略部門責任者、クリス・ジェフリー氏は「これまではコモディティーと金利の話にとどまっており、株式やクレジットの話ではなかった。しかし我々は、株式やクレジットに影響を及ぼし始める段階に達しつつあるのではと危惧し始めている」と述べた。

<原油価格>

中東全域で攻撃が激化し、さらに多くの供給ルートが脅かされる中、原油先物は開戦前の水準を50%上回る1バレル=100ドル超に戻っている。デリバティブ市場を見ると、トレーダーは短期的に価格が下落するとは予測していない。

オプション市場では、12月末までにブレント油が100ドルを超えることに賭けるポジションが最も多い。僅差で多いのは60ドルで売るポジションで、不確実性が極めて高いことを印象づける。

ディーゼルも過去最高値に接近し、航空燃料は2月にイランで戦争が勃発する前の2倍に達した。一方、欧州の天然ガスは、地元の公益企業とアジアの競合他社との奪い合いにより、2022年以来の高値を記録している。

オンライン予測市場のポリマーケットによると、ユーザーは12月までにホルムズ海峡が再開する確率をわずか18パーセントと見積もっている。

<インフレ期待>

夏の間に収まっていたインフレは再び加速している。米国では、ガソリン価格が3.9%跳ね上がったことで、8月の総合インフレ率が3.4%で高止まりした。

欧州も同様だ。ユーロ圏のインフレ率は、エネルギー価格を主因として7月の2.9%から8月には3.3%に加速し、欧州中央銀行(ECB)の目標である2%を大きく上回った。英国も、8月のインフレ率が5カ月ぶりの高水準となる3.1%に加速した。

ECBは今月、来年の平均インフレ率の見通しを2.5%に引き上げ、コアインフレ率の見通しは2.5%から2.6%に上方修正した。

スワップ市場が織り込むユーロ圏の期待インフレ率は、来年が約3.5%で、5年後でも2.4%と高い。米国は1年後が2.5%近くで、5年後もほぼ同じだ。

<金利見通しはエネルギー価格次第>

戦争によって世界的な金利見通しは一変した。以前は世界の中央銀行が金利を据え置くか、引き下げると予想されていた。

市場は現在、ECBが今後1年間で約1%ポイントの利上げを行うと予想しており、16日に0.25%ポイントの利上げを実施した米連邦準備理事会(FRB)についても、少なくともあと2回利上げを行うと見込んでいる。

トレーダーは、エネルギー価格が金利見通しに最も大きく影響する要因だと見なしている。

イングランド銀行(英中央銀行)は17日に金利を据え置く一方で、インフレ率見通しについては、2026年末までに3.2%でピークに達するとの従来予想を改め、27年初頭までに物価目標の2倍である4%を超えると予想した。

<成長への逆風強まる>

今年これまでのところ、各国の経済は逆風を力強く乗り越えてきた。

購買担当者景気指数(PMI)は、7月と8月に米国と欧州の景気が堅調に拡大したことを示した。

この力強さが株式市場を支えてきた。LSEG・I/B/E/Sのデータによると、米S&P総合500種構成企業の第2・四半期の純利益は前年同期比53%増加したとみられる。

しかしエネルギー価格は高止まりする見通しで、世界的に国債利回りは上昇している。米国の30年固定住宅ローン金利は平均6.7パーセントを超え、2025年6月以来の高水準となった。

投資家にとっての問題は、莫大なAI関連投資の持続可能性に疑念が生じる中、エネルギーコストと借り入れコストの上昇に経済成長が耐えられるかどうかだ。

<消費者は困窮>

消費者の生活は苦しくなる一方だ。ガソリン価格は急騰しており、特に欧州では燃料在庫がこの時期として15年ぶりの低水準となっているため、この冬は家庭のエネルギー料金が急騰する可能性が高い。住宅ローンなどの借入金利は上昇しており、賃金の伸びはそれに追いついていない。

投資家は景気減速を見込んでいる。S&P総合500種指数 が年初から10%上昇しているのに対し、一般消費財株指数 は約6%下落し、セクター別で最も大きく下げている。欧州では、その差がさらに顕著で、STOXX600指数 が年初から7.5%上昇したのとは対照的に、一般消費財株指数 は17%下落と、高級品株に次いで2番目に大幅な下落となった。

金利の上昇に伴い、消費者は支出よりも貯蓄を増やす可能性が高まり、自国経済からさらに活力を奪いそうだ。

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