Tamiyuki Kihara Yoshifumi Takemoto
[東京 17日 ロイター] - 高市早苗首相(自民党総裁)は17日、自身初の内閣改造に踏み切った。前日の党役員人事に続き、主要ポストはほぼ留任とした。複数の政府・与党関係者への取材からは、高市氏が「骨格維持」を選択した背景に二つの大きな思惑が浮かび上がる。一つは「責任ある積極財政」を推進するための安定的な基盤の確保、もう一つは来秋の党総裁選で再選を勝ち取るための「封じ込め」だ。
<「継続性の観点からも続投は歓迎だ」>
複数の関係者によると、高市氏が早々に留任を決めた閣僚の中には、片山さつき財務相の名前がある。2月の衆院選以降、片山氏は米国のイラン攻撃による情勢不安や原油高騰、物価高対策に取り組んできた。特に深刻化する円安・債券安については、同じく長期金利の上昇に苦しむ米との間で、財政当局間の調整や国内市場への対応も担った。高市氏はこうした「実績」を評価したという。
特に続投方針の決め手となったのは、7月末に実施した日米協調介入の実現だ。片山氏はベセント米財務長官と個別会談を重ね、介入に至る環境を整えていった。日米の財政当局筋は、ベセント氏は片山氏を「話が通じる相手」だと認識していると解説する。政府関係者は「両氏の関係を高市氏は評価した。ここで交代となれば、米との関係に悪影響を及ぼす可能性もあった」と語った。新内閣で片山氏は、高市氏が注力する消費減税法案や給付措置に関する国会答弁を担う。
同じく続投の小泉進次郎防衛相、赤沢亮正経済産業相も、それぞれ米側のカウンターパートと良好な関係を築いてきたと言われる。赤沢氏はラトニック商務長官と総額5500億ドル(約86兆円)の対米投資交渉をまとめ、実行に移している最中だ。高市氏の看板政策である17分野の戦略的投資の舵取りも実質的に担う。経産省関係者は「対米関係も国内政策も重要な時期を迎える。政策の継続性の観点からも続投は歓迎だ」と話した。
城内実経済財政相は、安倍晋三元首相と近い関係にあったことなどから、高市氏からも重用される存在だ。「市場は城内氏の発信をどう捉えるべきかなど、『扱い』に慣れてきている。得体のしれない人に代わるよりも留任の方がよかった」と語る政府関係者もいる。
<「次の総裁選には出ない」>
一方、複数の関係者が「高市氏が改造に当たって最も注力した」と話すのが、党内基盤の強化と来秋の総裁選に向けた環境整備だ。麻生太郎副総裁と鈴木俊一幹事長の留任が早期に固まったのも、党内に残る唯一の派閥である麻生派との関係維持を期待した結果だ。閣僚人事にも麻生氏への配慮がにじむ。昨年の前回総裁選で舌戦を交えた小泉氏、茂木敏充外相を留任させ、党の小林鷹之政務調査会長も16日に再任が決まった。
とりわけ次代を担うと目されている小泉、小林両氏は、総裁選にどう臨むかが党内でも注目されてきた。事情を知る自民関係者は、両氏が留任を受け入れたのは総裁選で高市氏に牙をむかないとの意思表示だと指摘。「2人とも勝負はまだ先だと考えたのだろう。高市氏が主要なライバルの封じ込めに成功したということだ」との見方を示した。前回総裁選で小林氏を支援した自民議員は「次の総裁選に小林氏は出ない」と言い切った。
ただ、不確定要素もある。総務相から閣外に出ることとなった林芳正氏の存在だ。林氏も前回総裁選で高市氏と戦った。官房長官や外相、文部科学相など豊富な閣僚経験を有し、「首相候補」と言われて久しいベテランだ。前出とは別の関係者は「林氏は次期総裁選に出るつもりだ。すでに水面下で様々な動きを始めている」とし、党内の非主流派をはじめ与野党問わない人脈づくりを急いでいる、とも述べた。
<「人事でも米との関係を重視」>
政策推進や日米関係、市場の信認確保や党内のライバル封じなど、多くの要素を加味して高市氏がたどり着いたのが「骨格維持」という結論だった。また別の政府関係者は、今回仮に人事を大きく動かした場合、ポストに就けなかった議員に呼応するように党内に溜まった高市氏への不満が噴出するリスクがあったと指摘。「党役員人事も閣僚人事も、骨格維持なら文句が出にくい。高市氏の選択はセンスがあったと思う」と評した。
高市氏は16日、党役員人事を発表した臨時総務会でこう強調した。「党・政府一丸となって難局を打開し、国民のみなさまに経済成長による豊かさと安心を実感していただけるまで、政策で未来を開いてまいりたい」
今回の内閣改造を専門家はどう見ているのか。元自民党政調幹部職員で政治評論家の田村重信氏は、高市内閣が60%前後の高い支持率を維持している点に触れ、「現状でも国民の支持があり、あえて高市カラーを封印しても問題ないと判断したと思わせる布陣だ」とみる。その上で、党役員人事でも閣僚人事でも麻生氏の意見をかなり尊重しているとし、その思惑について「狙いは次期総裁選での再選だけだ」と指摘した。
赤沢氏や城内氏の続投も、来秋の総裁選に向けて経済政策を着実に実行することが自身の支持につながるとの考えが背景にある、と説明。特に片山氏は、交代となれば米に対して誤ったメッセージを発しかねなかったとし、「高市氏が人事でも米との関係を重視している証拠だ」と述べた。閣外に出る林氏については、「党内で非主流派として戦った経験に乏しく、どのように『脱皮』をして総裁の座を目指すのか注目している」と語った。
(鬼原民幸、竹本能文 編集:橋本浩)