Dan Peleschuk

[キーウ 8日 ロイター] - ウクライナは、東部ドネツク州の要衝を巡り、数カ月に及ぶとみられるロシアとの激戦に備えている。ロシアにとっては戦争目標の核心をなす地域であり、就任したばかりのウクライナ軍のミハイロ・ドラパティ総司令官(43)と新たな指揮官らにとって最初の大きな試練となる。

兵力で勝るロシア軍は、いわゆる「要衝地帯」の都市スラビャンスクとクラマトルスクにじりじりと迫っている。両市を制圧すれば、ロシアは工業地帯であるドネツク州全域の掌握という目標に一歩近づくことになる。

犠牲者は既に多数に上っており、外交接触が再び動き出した局面にもかかわらず、軍事アナリストは冬の到来を前にロシアが攻勢を強めると予想している。

米政権のウィットコフ中東担当特使とトランプ大統領の娘婿ジャレッド・クシュナー氏は9月5ー6日にかけて、ロシアとウクライナを訪問。停滞していた和平協議が再び動き出したが、突破口が開けた兆しはない。ウクライナのゼレンスキー大統領は、戦争が冬を通じて続くとの見通しを示した。

ドネツク州を巡る戦いは、今年最も重大な局面の一つになりつつある。ロシアのプーチン大統領にとって、同州の残る地域を制圧できれば、政治的・軍事的に大きな勝利となる。

ウクライナにとっては、同州を保持することが東部防衛の要を守るために極めて重要であり、ロシアの緩慢ながら執拗な進軍を食い止めることを主目的とした指揮系統の刷新が正しかった、と証明することにもつながる。

改革志向のドラパティ氏は、シルスキー前総司令官の後任として7月に就任した。その後、実績があり信頼される指揮官らが同州の防衛を担うことになった。

新たな指揮部は、ロシアの進軍ペースが依然として遅い中、比較的安定した前線を引き継いだと、軍事アナリストのエミル・カステヘルミ氏は指摘する。ただ、戦闘のすう勢は予測不能だと警告した。

フィンランドに拠点を置く紛争分析団体ブラックバードのカステヘルミ氏は「依然として複数の展開があり得る。多くのシナリオがなお残されている」と述べた。

ウクライナは、ロシアが武力で奪えずにいるドネツク州の15─20%を明け渡すよう求めるプーチン氏の要求を一貫して退けてきた。ゼレンスキー氏は6日、ドネツク州の命運は「この戦争で問われているものそのものだ」と表現した。

<接近するロシア軍>

ロシア軍は、要衝地帯の二大都市スラビャンスクとクラマトルスクから15キロ足らずの地点まで進んでいる。両市とも、自爆型ドローン(無人機)と誘導爆弾による攻撃が悪化していると、地元当局者は述べている。

軍を支援するウクライナの主要慈善団体「カムバック・アライブ」の軍事担当マネジャー、アンドリー・デルン氏は「わずか数カ月で、活気ある都市から、通りを歩くだけで恐ろしい場所へと徐々に変わってしまった」と語った。

カーネギー国際平和財団のマイケル・コフマン氏は、9月から10月にかけて今年最も激しい戦闘が起きる可能性があり、ロシアが新たな機械化部隊による攻撃を試みる公算があると述べた。

コフマン氏は「気象条件が悪化すると、ドローンの効果が薄れる」と指摘。「そこがまさに、ロシアが戦場に機動力を取り戻そうとするところだ」と述べた。

同氏は、ウクライナがこうした攻撃に対する堅固な防御を築いてきたと指摘。包囲下の都市ドブロピリャ近郊で7月にロシアの攻撃が失敗したことを挙げた。

<信任の指揮官>

ドネツク州の防衛を統括するのは、ウクライナで最も名の知られた指揮官である、第3軍団団長のアンドリー・ビレツキー氏と、第1軍団「ア​ゾフ軍団」団長のデニス・プロコペンコ氏だ。

両氏はいずれも、数万人規模の規律正しく技術的に高度な部隊を築き上げた功績を認められている。

2026年初め、ビレツキー氏の軍団は要衝地帯の北の要であるスラビャンスクの前線の一部を安定させた。プロコペンコ氏のアゾフ軍団は25年、ロシアによるドブロピリャ近郊への大規模攻撃を阻止した。

ゼレンスキー氏の軍事顧問パブロ・パリサ氏は、両指揮官の昇任は「全く理にかなっている」と述べた。実績のある指導者で「尊敬と権威を得ている」という。

前出のデルン氏によると両指揮官を支えるのは、航空強襲部隊のエミル・イシュクロフ大佐だ。兵士の命を最優先することで部隊内で人気の高い、新世代指揮官の1人だという。同大佐の第11軍団がスラビャンスクとクラマトルスクを担当する。

ドラパティ氏の前任者シルスキー氏については、多大な損害をいとわない旧ソ連型の指揮姿勢や、前線の細部にまで介入する過度な管理体制を批判する声があった。

コフマン氏によると、ドラパティ氏は作戦レベルの指揮官により多くの権限を委譲しているとみられ、これは東部防衛を「はるかに一体的なものにする」ことを狙った転換だという。

<小さな戦果を足掛かりに>

ウクライナは、今年これまでに積み上げた限定的な戦果を足掛かりに、秋の戦いに臨む。ウクライナは数カ月に及ぶ「精密」反攻作戦で、南東部の700平方キロを超える領土を奪還したとしている。

ブラックバードのカステヘルミ氏はまた、戦略的な要地リマン近郊で、ビレツキー氏の第3軍団がロシアの先行部隊を断つ作戦に成功した兆しがあると指摘した。ただ、その規模は依然として不明だとしている。

ビレツキー氏は7日に投稿した動画で、前線の西にある景観の美しい修道院都市スビャトヒルスクに立ち、同市を制圧したとするプーチン氏の主張を巡って同氏を挑発した。

ビレツキー氏は「ここは、わが軍団の後方地域だ」と述べた。

もっとも、ウクライナ軍には大規模な攻勢を展開するだけの兵力がなお不足している。ドラパティ氏とフメラ新国防相はいずれも、汚職や不適切な運営で機能不全に陥った徴兵制度を改革できていない。

プーチン氏は今月に入り、ロシアが戦争に勝利しつつあり、ウクライナが「崩壊する」ことは疑いないと述べた。

だがアナリストらは、ロシアがウクライナのドローンを軸とする防衛に有効な解決策を見いだせていないと指摘する。

カステヘルミ氏は「概して、ロシアが戦術的なレベルを超えて成果を上げられるとは考えにくい」と述べた。

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