Kenrick Cai Stephen Nellis

[クパチーノ(米カリフォルニア州) 10日 ロイター] - 米アップルは9日に米西部カリフォルニア州クパチーノで開催した新製品発表会で、初の折り畳み式スマートフォン「iPhone Duo」を公開した。米国での価格は1999ドル(約31万円)からと高額で、優れた機能を備えているものの、満員の会場からは「裕福なテクノロジー愛好家以外にどれほど訴求力があるのか」といった声が聞かれた。

発表会では、アップル幹部らが拡張ディスプレー上で「ズーム」「スラック」「ネットフリックス」などのアプリを実演。仕事やコンテンツ制作、エンタテインメントまで幅広く活用できることをアピールした。

ジョン・ターナス新最高経営責任者(CEO)は「iPadのように自然で直感的な操作感を持つ大型ディスプレー」によって新たな可能性が広がると説明するとともに、iPhone Duoが利用者個人の「人工知能(AI)ハブ」として機能する未来像を強調した。

だが調査会社クリエイティブ・ストラテジーズのアナリスト、カロリーナ・ミラネッシ氏は「アップルは通常、購入者層を明確に特定するようなことはしないが、今回は特にそれを避けていたように見える」と指摘する。

アナリストらは、アップルの強力なブランド力によってiPhone Duoの初期販売は好調になるとみている。ただその熱狂が落ち着いた後には、高価格とターゲット層の不明確さが足かせとなり、裕福な早期購入者向けのニッチ製品にとどまりかねないという。

実際折り畳みスマホ市場は、登場以来この課題を抱えている。市場調査会社IDCによると、折り畳みスマホが2026年の世界スマホ市場に占める割合は3%未満にとどまる見通しで、アップル参入後の27年も大きな変化はないと予測されている。

カウンターポイント・リサーチのバイスプレジデント、ニール・シャー氏は「製品の位置付けにやや曖昧さがあった。仕事向けなのか、娯楽向けなのかが明確ではなかった」と問題点に言及した一方で、本来iPhoneがこれまで体現してきたのは多用途に使える万能デバイスという価値だとも説明した。

<誰に向けた製品か>

確かにアップルは幅広いマーケティング戦略を採用したことで、最高容量モデルが米国で3199ドルという価格にもかかわらず、誰に向けた製品なのかを明確に示さなかった。10年に共同創業者スティーブ・ジョブズ氏がiPadを発表した際には、タブレットという新たなカテゴリーを切り開く製品として位置付け、メディアやエンタテインメントの消費体験を大きく向上させるものだと訴えた。

その後15年には当時のティム・クックCEOが「iPad Pro」をクリエーティブなプロ向けツールとして打ち出した。当初はファッションアイテムとして売り出された「アップルウオッチ」も、現在では健康管理やフィットネスに欠かせないデバイスへと進化している。

一方、23年に発売した複合現実ヘッドセット「Vision Pro」では苦戦を経験した。技術力は評価されたものの、価格の高さや、娯楽以外の用途が見えにくい点に対して懐疑的な見方が広がった。

<待機需要>

それでもカウンターポイントのシャー氏は、既存のiPhoneユーザーを中心とした潜在需要が十分に存在するとみており、年末までに約600万台を販売できると予想している。この販売台数だけでも、アップルは世界の折り畳みスマホ市場で約25%のシェアを獲得する計算になるという。

現在の市場リーダーは韓国のサムスン電子で、同社は19年から折り畳みスマホを販売しており、アルファベット子会社グーグルや中国の華為技術(ファーウェイ)も市場に参入している。

サムスンは発売当初に「フォールドゲート」とも呼ばれた不具合問題に直面した。画面破損や部品のはく離が相次いで報告されたが、その後改善を重ねた結果、現在では市場シェア40%を握る。さらに今年7月には、パスポートサイズに折り畳める新モデルを発表している。

この新モデルは従来機種を上回る好調な販売を記録しており、サムスンは「当社の残り物を温め直しただけだ」として、iPhone Duoを揶揄(やゆ)する広告キャンペーンも展開した。

折り畳みスマホ市場全体の成長は近年鈍化しており、依然としてニッチなユーザー層以外への普及が進まず、市場拡大の勢いは弱まっている。ただアップルの参入は市場に大きな追い風をもたらすと期待される。調査会社オムディアは、26年の折り畳みスマホ出荷台数を2230万台と予測しており、21年以降で最大の前年比成長につながる可能性がある。

テクナリシス・リサーチのチーフアナリスト、ボブ・オドネル氏は「iPhone Duoの高価格は、とりわけ若年層にとって購入のハードルになる」と話す。とはいえ熱心なアップルファンが初期需要を支えるとの見方を示し、「誰もが欲しがる製品になるだろう。しばらくの間はステータスシンボルになるはずだ。おそらく入手も難しくなるだろうから」と付け加えた。

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