Jacob Bogage
[ワシントン 10日 ロイター] - トランプ米大統領が、11月3日の中間選挙で与党共和党が上下両院で多数派を維持した場合、米国の成人に1人当たり5000ドルの「配当金」小切手を支給すると表明したことについて、共和党内で賛否が分かれている。反対論の根拠になっているのは、この構想がインフレを加速させ、財政悪化を招くとの懸念だ。
トランプ氏は9日、南部テキサス州ダラスで開かれた共和党大会で「われわれの驚異的な経済的強さと成功」を祝うためとして、景気刺激策の支給を実施すると明言した。議会が承認した場合、総費用は約1兆2000億ドルに上るほか、数千億ドル規模の利払い負担も発生する見通しだ。
これに対して共和党内では、既に過熱気味の経済に巨額の資金を注入すれば、物価高に苦しむ有権者の懸念をさらに強めるとの声が出ている。デービッド・シュワイカート下院議員はロイターに「私は全身全霊で阻止しようとするだろう。それは働く人々を助けるどころか、かえって害を及ぼす。金利上昇をさらに招くことになる。結局は国民自身のクレジットカードで支払うようなもので、米国を金利上昇の悪循環へ一段と近づける」と訴えた。
選挙戦終盤で有権者の支持を盛り上げる手段として注目されている点から、配当金構想を支持する向きもある。バーニー・モレノ上院議員はSNSで、11月の選挙後に「トランプ配当」を制度化する法案の準備を進めていると明らかにした。
トランプ氏はこれまでも、関税収入や、政府効率化を進める「米政府効率化省(DOGE)」による歳出削減分を原資とした「配当金」支給を約束してきたが、いずれも実現していない。
2025年12月には軍人向けに「戦士配当」と称して1776ドルを支給したものの、実際には軍人住宅手当から転用された資金で、トランプ氏が説明したようなクリスマスボーナスではなかった。
保守系エコノミストでトランプ政権やホワイトハウス関係者に対して定期的に助言しているスティーブン・ムーア氏は「単なる政治的レトリックなのか、本気で考えているのか、トランプ氏の場合は分からないことがある」と語った。
ホワイトハウスのイングル報道官は「悲観論者や懐疑論者は一貫してトランプ大統領を疑ってきたが、大統領はそれが間違いであることを証明してきた。米国民の継続的な支持があれば、トランプ大統領は実際の成果を出し続ける」と述べた。
一方、民主党のテッド・リュー下院議員はSNSに「民主党が上下両院で多数派になれば、全員に1万ドルの配当金とポニー(小馬)、それに一生分の無料アイスクリームを配る」と投稿し、トランプ氏の構想を皮肉った。
共和党大会の会場でも有権者の反応はまちまちだった。テキサス州の知的財産権弁護士を引退したクリスティン・ガードナーさんは「とても奇妙だと思った。お金で票を買おうとしているのではないかと感じた」と語った。
ただ南部オクラホマ州の牧師クリス・ローレンツさんは支給案を支持した上で「米国民は税金を払い過ぎている。民主党による極左政策を防ぐためにも共和党は勝たなければならない。中間選挙に勝つ助けになるなら、5000ドルは素晴らしい。国の将来が懸かっていると信じている」と話した。
トランプ氏は9日の演説で、中間選挙を自身の政権運営に対する信任投票と位置付けて「私が投票用紙に載っていると思ってほしい」と呼び掛けた。
しかし最近のロイター/イプソス調査によると、有権者の間ではトランプ氏の政策への支持が低下している。支持率は33%にとどまり、カナダ製品への新たな関税政策には過半数が反対。生活費対策では民主党のアプローチを支持する有権者が共和党を8ポイント上回っている。
共和党上院トップのスーン院内総務は、上院で議事妨害を阻止するために必要な60票の支持を、この配当金法案が確保できるかは不透明だとしながらも、共和党が両院で多数派を維持できるとの見方を示した。