Saqib Iqbal Ahmed
[ニューヨーク 9日 ロイター] - 米中間選挙まで2カ月に迫る中、米国株のオプション市場は脆弱さと過度の楽観が入り交じる危険な様相を呈しており、市場が予期せぬショックを吸収する準備ができていないのではないかとの懸念も浮上している。
債券市場の混乱にもかかわらず、株価は最高値圏を維持している。各種のボラティリティー指標は今年の最低水準近辺で推移し、銘柄間の相関関係は過去最低水準に接近、つまり通常以上に個別の動きを見せている。
アナリストの多くは、選挙結果自体が市場を大きく動かすとはみていない。ただ、11月3日の投票に向けて市場は不安定化する可能性がある。
選挙が近づくにつれ、投資家の関心は議会の主導権を巡る不確実性や、それによる政策への影響、政治のねじれや基盤の弱い政権誕生のリスクへと向かい、相場の急変動を引き起こす可能性があるとアナリストは指摘する。
歴史的に見ても、中間選挙前の9月から10月にかけての期間は、株式にとって変動の激しい時期となってきた。
<市場の平静>
米投資銀行キャンター・フィッツジェラルドの分析によると、1930年以降の中間選挙年24回のうち15回で、S&P総合500種は9ー10月に5%以上下落している。
もっともオプション市場を見る限り、そうした状況への警戒感はうかがえない。
オプション市場に基づき投資家の懸念を映し出すシカゴ・オプション取引所(CBOE)のVIX指数(ボラティリティー・インデックス)は、最近になって15前後と、今年の最低水準を更新した。これは長期的な中央値17.6を下回っており、堅調な企業業績が市場を支え続けるとの確信が投資家の間に根強いため、VIX先物も安定した動きを見せている。
トールバッケン・キャピタル・アドバイザーズのマイケル・パーブス最高経営責任者(CEO)は「VIXには、中間選挙に対するリスクプレミアムがまったく織り込まれていない」と語る。
中間選挙に向けては、インフレや雇用に関する経済指標の発表、連邦公開市場委員会(FOMC)、9月下旬の習近平・中国国家主席の訪米など、重要イベントが目白押しだ。
一部のアナリストは、選挙自体も市場への影響があると予想する。ロイター/イプソスの世論調査によると、生活費問題への対応では野党民主党が与党共和党を大きくリードしており、トランプ大統領と共和党にとって懸念すべき兆候となっている。
エバーコアISIの株式・クオンツ筆頭トラテジスト、ジュリアン・エマニュエル氏はレポートで、民主党が下院過半数を奪還すれば、ホワイトハウスと上下両院を共和党が支配する状態が崩れ、市場に不確実性をもたらすと予想。「仮に上院まで逆転すれば、こうした動向はさらに増幅されるだろう」と付け加えた。
<「タービュレンズ」>
市場の楽観姿勢に加え、ポジションの過度な集中、狭いクレジットスプレッド、リスクヘッジ需要の低迷といった一連の投資家心理指標は、市場がどのようなショックにも備えていないことを示している。
今後1カ月間の市場の脆弱性を予測するUBSの機械学習モデル「タービュレンズ」では8月末、潜在的な市場ストレスが最高水準に達した。
UBSの米株式デリバティブ調査責任者マックスウェル・グリナコフ氏は「(タービュレンズは)ここ数週間、極度の脆弱性を叫び続けているような状態だ。シートベルトを締めずにゴーカートで高速道路を時速100マイルで走っても、無傷で目的地にたどり着ける可能性はある。しかし誰かに衝突されたら、ただでは済まないだろう」と語る。
<材料は企業業績だけ>
ただ一部の投資家から見れば、中間選挙を巡る静けさは妥当だ。選挙結果がどうあれ、堅調な業績と力強い経済成長が株価を支え続ける可能性が高いからだという。
パーブス氏は「現在の株式市場を動かしているのは、企業業績だけだ」と述べ、中間選挙結果が企業業績を圧迫したり、株式需要を冷え込ませたりする可能性は低いとの見方を示した。
近年ヘッジ取引に資金を投じた投資家が、十分な恩恵を得られなかったという背景もある。シムコープのダシエ氏は「過去3年間、空売りした者は資金を失ってきた。だから再度試みるのをためらう面もある」と語った。
それでもボラティリティーが現在の低水準にあることを踏まえると、選挙までの2カ月間に備えて自己防衛を図る投資家にとって、現在のオプション価格は魅力的かもしれない。
エバーコアISIのエマニュエル氏は「インプライド・ボラティリティー(市場で想定されている変動率)の全般的な水準は、中間選挙がもたらすリスクと比較すると、極めて割安だ」と語った。