Tamiyuki Kihara Yoshifumi Takemoto
[東京 8日 ロイター] - 飲食料品の消費減税をめぐり、政府は15日の閣議決定を目指す「税制改正大綱」に、減税されない1%相当分が給付される対象者の所得水準を明記しない方針だ。境界線となる「閾値(しきいち)」は年末までの予算編成過程で固める意向だが、臨時国会での論戦の火種になる可能性がある。2028年に迫る参院選や、その先に控える29年度からの制度本格導入を見据え、政府内には警戒感も漂う。
<「現時点では決められない」>
「消費減税の議論には、最後に待ち受けるハードルがある」。事情を知る政府関係者はロイターの取材にこう述べた。念頭に置くのは閾値だ。
高市早苗首相は、純負担率の高い現役世代を中心に手取りを増やすなどの目的で給付付き税額控除の導入を目指す。それまでの「つなぎ」とされるのが飲食料品の消費減税だ。政府は27年4月に軽減税率の8%を1%に引き下げ、同年6月以降、1%相当分の範囲内で「所得連動型の給付制度」を先行導入する。規模は6000億円とされる。
政府は15日にこうした内容を盛り込んだ大綱の閣議決定を想定する。与党内や地方自治体との議論も進むが、複数の関係者は1%相当分が満額給付される人の所得水準や、給付が消失する所得額について大綱には盛り込まない方針だと語った。関係者の一人は「財源となる来年度当初予算が編成過程にある中、現時点では決められない」と説明した。
超党派の「社会保障国民会議」の議論を経て8月5日に閣議決定した給付付き税額控除の基本方針では、1%相当分の給付について、「働き控え」への対応や中低所得の現役勤労者に手厚く対応する観点から、税額控除の本格導入を先取りした取り組みとして実施すると記載されている。
<「審議に影響を与えないタイミングで」>
とはいえ、来る臨時国会では消費減税関連法案の審議が待ち受ける。1%相当分が行きわたる閾値について与野党から問われるのは必至だ。国民会議の実務者協議で与野党が具体的な制度設計で一致に至らないまま事実上決裂した経緯もあり、特に野党側からは境界線となる所得水準を明らかにするよう求められる可能性がある。
恩恵が及ばない所得層が明らかになれば、政権への批判や支持率低下につながりかねない。とりわけ少数与党の状況が続く参院では、一部の野党や無所属議員から賛成を得る必要もある。前出の関係者は閾値が明示された際の反発を警戒し、「なるべく審議に影響を与えないタイミングで政府側から説明する必要がある」との認識を示した。国会答弁の中で高市氏や関係閣僚から直接説明することを主に想定しているという。
政府には苦い経験もある。24年、当時の岸田文雄政権が取り組んだ「子ども・子育て支援金制度」の審議だ。国会では、少子化対策などの財源として医療保険料に上乗せされる金額が大きな論点となった。歳出改革による社会保険料負担軽減などとの差し引きで「実質負担ゼロ」とする政府に対し、野党は追加徴収される具体的な金額の提示を求めて審議が紛糾。岸田氏は「1人あたり月平均500円弱と見込まれる」との説明を迫られた。
前出とは別の政府関係者は、消費減税について「制度設計自体は与野党が国民会議で議論した内容でもある。丁寧に説明すれば理解を得られるはずだ」と語った。
<「国民に丁寧に説明していきたい」>
1%相当分の閾値が明らかになれば、税率が8%に戻る29年度に本格導入される「所得連動型の給付制度」での境界線もある程度浮き彫りになる。給付は年1回とする方向だが、消費税率の復活に伴う負担感を緩和するため、29年度は秋に予定する額の半分を、春に前倒しで支給する予定だ。
高市氏はこれまで、本格導入後の給付対象者について「中低所得の現役勤労者の大宗」が消費減税の効果を上回る支援を受けられると説明している。制度設計に精通する政府関係者の一人は、「1%相当分の対象と本格導入時の対象者はイコールではない」と断った上で、閾値が大きく異なることにはならないだろう、との見通しも語った。
自民党内の税制議論を知る衆院議員は、野党の理解を得られる見通しがないことや、恒久財源の議論が進んでいないことに触れ、「結局は財源の問題だ。財源が固まらないうちに政府・与党で急いで(閾値を)決めても意味がない」と語った。
本格導入に向けた議論が想定される時期は、28年の次期参院選と重なる。前出の関係者は、来る臨時国会で1%相当分の給付対象について高市氏がどう説明するかは、「2年後の国会論戦や参院選を見据えた上でも重要だ」とも付け加えた。
閾値の決定や明示のタイミングについて、木原稔官房長官は8日の記者会見で「今後、(8月5日に閣議決定した)基本方針に基づいて制度設計をさらに進め、今月には大綱を決定するので、その内容について国民に丁寧に説明していきたいと考えている」と述べた。
(鬼原民幸、竹本能文 編集:橋本浩)