Olena Harmash Anna Voitenko

[キーウ 5日 ロイター] - 通勤客は足止めされ、子どもたちは授業の途中でも地下シェルターへ急ぐ。祭りは中止となり、散歩中にも防空システムの轟音(ごうおん)が響き渡る。絶え間ないドローン(無人機)による攻撃が新たな日常と化しているウクライナの首都キーウで、今後の市民生活は一層厳しいものになりそうだ。

2022年2月のロシアによるウクライナへの全面侵攻開始以来、キーウは多くの苦難を乗り越えてきた。戦争勃発当初の衝撃だけでなく、攻撃用ドローンや弾道ミサイルによる脅威にも、市民は次第に適応し、一定の平穏な暮らしを取り戻してきた。

しかし戦争が始まってから5回目の冬を前に、「普通の生活」を維持することはますます難しくなっている。

この夏以降、ロシアは従来のプロペラ式ドローンよりも破壊力が高く、迎撃が困難なジェット推進型ドローンを大量投入し始めた。過去10日間、空襲は昼夜を問わず続いているため、多くのウクライナ人が抱いていた「自国による長距離ドローン攻撃で戦況を押し返せるかもしれない」という期待も揺らぎつつある。

ビターリヤ・ポリアコワ(35)さんは3日、パートナーとともにドニプロ川東岸の橋の近くを車で走行中、ジェット推進型ドローンが道路に着弾し、2人とも負傷した。救急車の中で取材に応じたポリアコワさんは「話をしながら車を運転していたら、突然爆発が起きた」と語った。自身は右手を切り、パートナーは顔と右脚にけがを負ったという。

<市民が恐れる過酷な冬>

約300万人のキーウ市民にとって最大の懸念は、冬の到来だ。ロシア軍の攻撃により、戦争開始以来たびたび停電や断水が発生してきたが、この10日間の攻撃激化からは今冬、さらに深刻な混乱が生じる可能性が読み取れる。

8月末のロシア軍の攻撃で自宅アパートが被害を受けたボフダンさん(29)は、壊れた建物を見渡しながら「この1年は本当に大変だった。今回の攻撃で分かる通り、さらに厳しくなっていくだろう。だからわれわれは引っ越すことにした」と語った。

前線では毎週、数百人規模の死傷者が出ているものの、戦況に大きな変化は見られていない。その一方で、ロシアとウクライナはここ数カ月、互いのエネルギー施設や物流拠点を標的とした激しい空中戦を繰り広げている。

国連によると、この戦争で確認された民間人の死者はこれまでに1万6000人を超え、その大半はウクライナ国内で死亡している。ロシア、ウクライナの双方は民間人を標的にしていないと主張しているが、キーウとその周辺地域では8月27日以降だけでも数十人の民間人が死亡した。

<通勤や買い物も困難に>

8月31日には、空襲警報が繰り返し発令された影響で、ドニプロ川によって分断された市内東西を結ぶ地下鉄の運行が停止した。市中心部の対岸に位置するオソコルキー駅の混雑したホームで2人の息子とともに警報解除を待っていた看護師で心理学者のユリアナ・オリイニクさんは「もう寝袋を持ち込んで、学校の近くの駅で寝泊まりした方がいいのではないかと考えている。昨年も学校生活は大変だったが、今年は正直どうしたらいいのか分からない」と話す。

市中心部へ向かう道路は渋滞し、バス停は人であふれ、多くの市民が職場への往復で長距離を徒歩移動している。

買い物も以前より難しくなった。大規模スーパーは空襲警報が鳴ると営業を中断するため、客は買い物の途中でも店外へ退避しなければならない。また物流網の混乱や倉庫への攻撃により、一部の乳製品が品薄となっている。

<強まる対ロ強硬論>

ウクライナ空軍のユーリー・イフナト報道官は、ロシア軍が8月だけで2800機を超えるジェット推進型ドローンを発射し、7月の使用数は6月比で約5倍に増加したと明かした。

こうしたドローンの迎撃率は約60%にとどまり、従来型ドローンの90%超を大きく下回っている。

ロシアの主張に基づくと、これらの攻撃には軍事的な目的があるという。だがウクライナ側は、米国が和平実現に向けた新たな働きかけを進めている中でのロシアの攻撃は、市民の士気をくじき、領土放棄を迫る政治的・心理的な圧力だと非難する。

もっともそうしたロシアの圧力があっても、キーウ国際社会学研究所が8月に実施した世論調査では、対ロシア強硬論が強まっていることが示された。ロシアのプーチン大統領が主要条件として求めるドンバス地域の未占領地域をロシア側に引き渡すことについて「割譲すべきではない」と回答した人の割合は、4月の62%から8月には69%へ上昇した。

新年度が始まったキーウ市内のある学校では、児童たちが最初の授業を終えた直後に空襲警報が鳴り、地下避難所へ移動して授業を続けた。この学校は5月のロシア軍攻撃で損傷を受け、新入生は減りつつあるが今年は約400人の児童が在籍している。

新学年を祝うために伝統的なウクライナ衣装を身にまとい、花束を持って登校した少女オレクサンドラさんは、図工の授業が特に好きだと話した。将来の夢を聞かれると「戦争が終わること」と答えた。

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