Michael S. Derby

[19日 ロイター] - 米ボストン地区連銀が19日公表した調査担当者の論文で、トランプ大統領が導入した大規模な関税措置によるインフレ圧力について、米企業の高い労働生産性がその影響を大幅に和らげていたとの分析結果が示された。

論文は「2025年に関税によってコスト上昇に直面した産業ほど、労働生産性の伸びも大きく、高まったコストを吸収する手助けになった」と指摘した。

関税引き上げで企業の投入コストは増加したものの、従業員1人当たりの生産量を高めることで、企業はコスト増を価格に転嫁する必要性を抑制。その結果、米連邦準備理事会(FRB)が目標とする2%を上回る状態が続く物価上昇率の押し上げ幅は、関税だけで見れば限定的だったという。

論文は、トランプ氏の政権復帰前に平均2.5%だった関税率が10%へ上昇したことに関して、堅調な生産性の伸びと合わせて、コアベースの個人消費支出(PCE)物価指数を0.5ポイント押し上げたと試算した。

また関税によるコスト増の影響が大きかった企業は、労働投入量を削減しながら生産水準を維持しており「労働時間の減少が労働生産性の向上に寄与した」と説明。その上で関税によるインフレ押し上げ効果は確認されたものの、最近の高インフレを説明するには、それ以外の要因も考慮する必要があると付け加えた。

論文は「生産性の向上が、関税による消費者物価上昇を大きく相殺した。労働生産性の改善(のみ)を踏まえれば、物価上昇率は実際よりも2%近辺に近かったはずだ」と述べ、関税の影響よりも長期的な性質を持つ他の要因がインフレの重要な押し上げ要因となったのではないかとの見方を示した。

一方でニューヨーク連銀の研究などでは、関税によるコスト増が消費者価格へ大きく転嫁されているとの分析もあり、トランプ政権の通商政策によるインフレ圧力は今後も続く可能性があるとの意見もある。

ボストン地区連銀の調査担当者は生産性向上の背景として、関税の影響を受けた企業による設備投資拡大や生産効率改善のほか、高コストの輸入部材に依存していた企業が市場を退出したといった可能性を挙げた。企業が人件費抑制を目的に設備や生産体制への投資を進めたことも、生産性向上につながったとしてもおかしくないとしている。

Reuters Copyright (C) 2026 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。