心臓病専門医のリック・スナイダーは「AIで血液中の何千ものタンパク質や代謝産物を解析することで、症状が出る何年も前に生物学的な警告サインを察知できるようになるかもしれない」と、カーディオミクスコアに期待を寄せる。
研究チームは、ディープラーニングを用いて多角的な生物学的データを統合する「マルチオミクス」という手法を採用した。これは遺伝物質を扱うゲノム学、タンパク質を扱うプロテオミクス、消化やエネルギー産生、疾患への応答によって生じる小分子を扱うメタボロミクスを掛け合わせたものだ。
大規模データベース「UKバイオバンク」を活用し、血液サンプルに含まれる2920種類のタンパク質と168種類の代謝産物をもとに解析モデルを構築。これらの分子を組み合わせることで、自覚症状が出る前に免疫機能や代謝、血管の状態の変化を捉えられるようにした。
心血管疾患の予測において、カーディオミクスコアは従来の遺伝子リスクスコアを上回る精度を示した。さらに、年齢や性別といった基本データを加味すると、その予測精度は一段と向上したという。
今回の研究結果は、将来的に心臓病リスクの評価方法が大きく変わる可能性を示している。生涯変わらない遺伝子検査に対し、時間とともに変化する生体シグナルを追跡できるこのツールなら、病気が本格化する前に予防へ動ける時間的猶予を格段に延ばせる。
ただ、「有望な技術ではあるが、適切な臨床評価の段階を踏む必要がある」とスナイダーは指摘する。「このモデルは主にUKバイオバンクのデータを基に開発されたもので、現時点では独立した検証が十分に行われておらず、従来のリスク評価や医師の判断に取って代わるものではない」
その上でスナイダーは、「多様な患者集団で正確に機能するか、具体的な治療判断につながるか、さらに費用面も含めた検証が必要だ」とし、「医療は予測と個別化を軸に、予防重視へと確実に移行していく」と述べる。
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