Alexander Gudbrandsen Sam Tabahriti Giulia Segreti
[オスロ/ロンドン 15日 ロイター] - 欧州はこの夏に記録的な猛暑に見舞われ、鉄道網が機能不全に陥り、道路のアスファルトが溶け、電力網の負荷が高まるなど、重要インフラが軒並み厳しい状況に置かれている。各国は老朽化したインフラを守るため、線路点検用のドローンや人工知能(AI)を活用したセンサーから、果ては「白い塗装」という意外なほどシンプルな手法に至るまで、さまざまな対策の導入に追われている。
ノルウェーのオスロ空港では15日、気温が平年を約10度上回る30度まで上昇するとの予報が出され、作業員が舗装面の温度を下げる作業を行った。消防隊は約9000リットルの水を滑走路の重要区間に散水。高温下ではアスファルトが軟化し、航空機の重さで損傷する恐れがあるためだ。
ノルウェー航空・空港管理公社アビノールのオペレーティングエンジニア、ヨルン・アルビド・レマーク氏は、「ノルウェーのアスファルトは、厳しい寒さと比較的高い気温の双方に耐えなければならない」と述べた。耐熱性を高めた新型アスファルトの試験を進めているという。
ロイター・クライメート・モニターによると、西欧の15日の気温は平年を5.5度上回った。一方、欧州の道路や鉄道の多くは数十年前に整備されたもので、近年の猛暑への対応が難しくなっている。
インパックス・アセット・マネジメントのサステナビリティーセンター共同責任者、クリス・ドッドウェル氏は、「欧州のインフラは今後予想される極端な気象現象に対応できる状態ではない。かつてはめったに起きなかった熱波が、今では日常的な現象になりつつある」と危惧を示した。
主要中央銀行が2025年に公表した報告書は、熱波や干ばつ、洪水などによって、ユーロ圏の域内総生産(GDP)が30年までに最大4.7%押し下げられる可能性があると試算している。
<豪雨・暴風のリスクも拡大>
欧州の鉄道網は異常気象の影響を特に強く受けている。
欧州連合(EU)が4月に公表した報告書によると、鉄道運営管理者の7割超が異常気象による運行障害の増加を実感している。2015年から24年に発生した気象関連の運休・遅延を合計すると、欧州全体で1年から3年分の鉄道運行に相当する規模に達した。
高温になるとレールが膨張し、分岐器(ポイント)や信号設備、電力設備などに不具合が生じる。
しかし、専門家によると、高温そのものよりも、それに伴って発生する異常気象の方が鉄道に深刻な影響を与えるという。
ミラノのボッコーニ大学で交通政策を専門とするオリビエロ・バチェリ教授は、「鉄道網にとって最も重大な問題は暑さそのものではなく、熱波の後に発生する雷雨や強風、土砂崩れだ」と指摘。「イタリアでは気候変動に伴う事象により、とりわけアルプスを通る路線で大きな混乱がすでに発生している」と述べた。
英国など北部の国はとりわけ難しい課題に直面している。鉄道インフラの多くが、南部の国に比べて、より狭い気温範囲を前提に設計されているためだ。
英電気技術者協会(IET)鉄道技術ネットワークのジョン・ローレンス会長によると、多くの鉄道設備やシステムが「実質的に時代に取り残されたままになっている」。鉄道網全体を耐熱仕様へ改修するには莫大な費用が必要だが、事業者はより安定性の高い枕木の採用や、AIやドローンを活用して「点検・監視できる線路区間を大幅に増やす」技術の導入を進めているという。
英国のインフラ管理会社ネットワーク・レールは、24-29年に26億ポンド(約35億ドル)を投じて、増加する異常気象に耐えられる鉄道網の整備を進める方針を示している。
一方で、全ての対策が高額というわけではなく、昔ながらの方法で熱対策を講じている鉄道事業者もある。ストックホルム交通局は5月と6月に、線路の変形を防ぐため、一部の地下鉄線路を白く塗装した。作業に要した費用は約10万スウェーデンクローナ(約1万0300ドル)だった。
<深刻化する熱波>
フランスの鉄道車両メーカー、アルストムのエンジニアリング担当ディレクター、マーティン・ウィルソン氏は、欧州はサウジアラビアのリヤド地下鉄やドバイ・トラムのように、50度を超える環境でも運行できるよう設計された交通システムから学ぶべきだと指摘。「今の熱波は、より激しく、より頻繁で、そしてより長期化しており、気温上昇は欧州全体の鉄道システムにますます大きな課題を突き付けている」と語った。
道路も同様の課題に直面している。技術者によると、北部の高速道路は主に凍結と融解の繰り返しによる損傷に耐える設計となっている。一方、スペインなど南部の国では、長期間の夏の高温に適したアスファルトが使われている。
しかし、冬季の寒さと夏季の高温の双方に対応する必要がある中で、その最適なバランスを見つけることは年々難しくなっている。
スペイン土木技術者協会のホセ・パブロ・サエス・ビジャール氏は、北部欧州の道路計画担当者や建設事業者は「設計の考え方そのものを見直す必要があるかもしれない」と述べた。パリ交通公団(RATP)は熱波対応の専門チームを設置し、年末までに気候変動への適応計画を策定する予定だ。
ノルウェーでは、気温上昇と降水量の増加を受け、新たなインフラ設計の考え方も変わり始めている。ノルウェー道路庁の社会開発・気候部門責任者、グレーテ・ビカネ氏は、「道路はこれまで以上に強靱な構造で建設されるようになる」と見ている。「すでに現れている気候変動の影響だけでなく、今後予想される気候変動の影響にも耐えられるようにするためだ」