※この記事は、以下の記事の後編です。
記事前編:「金儲け」「何やってるんだ!」 パンチくん人気の動植物園、心ない声も…激動の4カ月「拡散力の怖さ知った」
記事中編:「パンチくんフィーバー」は偶然ではなかった…「公立」市川市動植物園が取り組んできた地道な工夫

パンチくん人気の火付け役となったのは園の諸々を取り仕切る市川市の動植物園課長の安永崇さん。目が回るような忙しさの中、動物ファーストで日々メディア対応や円のスタッフのケアに奔走する。ただ、動植物園にかかわるようになったのはほんの1年ほど前。当初、これほど忙しくなるとは夢想もしなかったという。

理想主義の尖った若者が、丸くなって辿り着いた場所

「私は市川市役所の、ただの事務職員ですから」。そう言って豪快に笑う安永さん(52)の経歴は、いわゆる「動物のプロ」のそれとは異なる。1998年に入庁以来、福祉、商店街振興、図書館と、一貫して「地域の住民と向き合う部署」を歩んできた、叩き上げの行政職員だ。

大学卒業後、当時は就職氷河期真っ只中で公務員の人気が高かった。そうした折、「地元の人を幸せにしたい、市川を盛り上げたい」という強い思いで、当時約60倍の高倍率を突破して掴んだ市役所の切符だった。

「若い頃は理想に燃えていて、割と尖った人間だった。お役所仕事と言われる前例踏襲や法律の壁と戦っては、上司と喧嘩ばかりしていた」と苦笑気味に半生を回顧。職場の多くの理想主義者が現実の壁に突き当たって燃え尽き、去っていく中、安永さんは「消えない炎」を抱えたまま、28年間を戦い抜いてきた。川の流れに揉まれる石のように角が取れ、人間としては丸くなった。しかし胸の奥にある芯は尖ったまま機が熟すのを待っていた。

2025年4月、満を持して動植物園課長に着任。公営の動物園は概して構造的な赤字組織であることを承知の上で、「どうすれば市民に納得してもらえるサービスを提供できるか」を考え抜く日々が始まった。それまで約7台だった園内の登録キッチンカーを30台以上にまで増やし、来園者がリピートしたくなる環境を整備。古株の販売者からは「増やし過ぎだよ」と憎まれ口を叩かれながらも来場者の満足度を優先した。

大谷翔平並みにバズった「パンチ」の衝撃
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