市川市動植物園のパンチくん
他のサルにくっつくパンチ(筆者撮影)

SNSで見知った有志や来園したファンらによる「パンチくん応援団」が自然発生的に結成され、YouTubeやX(旧Twitter)には日々、パンチの動画であふれ返るようになる。「今日はこれができた」「友達になれたみたい」。そんなパンチの文字通り一挙手一投足に、世界中のサポーターが一喜一憂する一大現象へと発展した。英BBCや米ABCなど海外メディアの報道も増えるとともに、海外からの来園者が目立つようになってきた。

応援だけじゃない、誹謗中傷、過剰反応

しかし、爆発的な「バズ」がもたらしたのは、光ばかりではない。むしろ園を襲ったのは、国内外から押し寄せる過剰なまでの反応と、時に罵詈雑言のような激しい誹謗中傷の嵐だった。

ニホンザルは階層型の厳しい社会性を持つ動物であり、群れのルールを学ぶ過程で、大人や“先輩”のサルから叱られたり、引きずられたりすることもある。それは野生の生態そのものであり、パンチがニホンザル社会の一員として生きていくために避けて通れないプロセスだ。

だが、SNSのショート動画などでその「引きずられている一瞬」だけが切り取られて拡散されると、事情や全容を知らない応援団の一部はパニックに陥った。「動物園は何をやっているんだ」、「パンチくんが可哀想でしょ」。園の対応限界を超え、電話やメールの窓口はパンク状態となった。

中には「虐待を放置している」「パンチを見世物にして金を稼いでいるんだろう」といった、心無い邪推や非難の声もあった。また「アニマルウェルフェア(動物福祉)」への意識が高い欧米などの海外勢からは、猿山の環境そのものに対する厳しい意見も寄せられた。

「喜びや優しさの感情が一転、負の熱量も生み出してしまう。動画の拡散力の恐ろしさを身をもって知った」と安永さんは語る。悪意のない「可愛い」「可哀想」というある意味で自然な情念が、刺激的な編集によって歪められ、ネット上で負の感情の拡大再生産が行われていく。同園はその矢面に立たされ続け、同園始まって以来の異例ずくめの嵐のような4カ月が過ぎ去った──いやまだその渦中にいるのかもしれない。

「犠牲は自分だけでいい」
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