Libby George
[ロンドン 30日 ロイター] - 今後10年でドルの保有比率を引き下げる計画の中央銀行が、引き上げを計画する中銀よりも多いことが、英シンクタンクの公的通貨金融機関フォーラム(OMFIF)が30日公表した公的投資家を対象とする調査で分かった。米ドルに絡む政治リスクが高まっていることが背景。
同調査でこうしたドル離れの動きが示されたのは初めて。
調査結果は、米政策の不透明感や地政学リスクの高まりを背景に活発化している、ドルの基軸通貨としての役割を巡る世界的な議論と符合する。
調査対象となった世界の中銀、公的年金基金、政府系ファンド計90機関の間で、人工知能(AI)の活用を現在の水準から大幅に拡大する意欲が見られることも分かった。
合計で約10兆ドルの資産を運用する調査対象機関は、ボラティリティーが一時的な現象ではなく恒常的なものになっているとの認識を強めており、AIの応用を含めた新たな対応手法を試している。
OMFIFのシニアエコノミスト、ヤラ・アジズ氏は報告書で「公的投資家は環境が正常化するのを待てば良いという従来の前提は、ますます非現実的になっている」と指摘した。
<ドルの存在感低下、旺盛な金需要>
米金利上昇、米資産への強い需要、イラン紛争をきっかけとする質への逃避を背景に、ドルは年初から3%上昇。ドルに代替する明確な通貨は存在しない。
それでも、中銀の約79%、公的年金基金の60%が、世界の通貨システムが「多極的」な世界へと移行しつつあると考えている。
上位8通貨以外の通貨が準備資産で徐々に存在感を強めている。各国中銀はノルウェークローネやニュージーランド(NZ)ドルの配分拡大を模索し、ポンドへの関心も高めている。
調査回答者は、ユーロと中国人民元の保有を増やす方針を維持したが、構造的な課題が両通貨の足かせになっていると指摘した。とはいえ、ほぼ全員が、人民元を効果的なポートフォリオの分散化手段と見なした。
82%の中央銀行が保有している金は「準備資産の管理戦略の中心に移った」という。短期的には、中銀が最も保有高を増やす予定の資産で、差し引き30%が今後1─2年で配分を拡大する意向を示した。
<AI利用拡大>
AIの利用も増加している。調査では、66%以上の中銀が近い将来にAI統合の拡大を計画。現在の利用状況に満足しているとの回答は、先進国の中銀ではゼロで、全体でもわずか9%にとどまった。
各中銀のAI活用は、主にデータ分析とバックオフィス業務。ただ、先進国中銀の89%以上がAIを利用しているのに対し、新興国は44%にとどまり、格差がある。
<公的年金は実物資産を選好>
公的年金基金の間では、インフラや不動産などの実物資産に対する需要が他の資産を上回っており、約60%が今後1─2年で配分を増やす計画。
また新興国市場に対する認識の変化も示され、新興国資産への配分を増やす計画の世界の公的年金基金は38%と、25年の27%から上昇した。
新興国資産への配分拡大への関心は、先進国資産を上回り、先進国資産の配分拡大需要は25年の47%から25%に低下した。
最も魅力的な市場は米国と中国で、AIブームにおける両国の役割が一因になっている。