Samia Nakhoul

[ベイルート 24日 ロイター] - 2月末に米国とともにイラン攻撃に乗り出したイスラエル。米国とイランの和平に向けた暫定合意の覚書は、イスラエルの対イラン戦略よりも、ネタニヤフ首相の威信を大きく傷つけたと識者や政府関係者は指摘する。トランプ米大統領の怒りを買い、中東諸国を遠ざけ国際的に孤立し、秋に総選挙を控えて極めて脆弱な立場にある。

ネタニヤフ氏はかつて「アメリカン・ウィスパラー(米国を操る者)」と呼ばれ、電話一本で米政府の戦略的計算をイスラエルの計算と確実に一致させられた。米共和党とのパイプも強い。

しかし2月末に始まったイラン紛争は、ネタニヤフ氏の基盤を揺るがした。当初目指したイランの体制転換、レバノンの親イラン民兵組織ヒズボラの解体、イスラエル北部の治安回復はいずれも実現していない。

<妨害者>

かつてネタニヤフ氏を不可欠な対話者と見なしていた米国は今や、同氏が断固として守ろうとしている合意の障害と見なしていると外交筋は語る。事実、覚書が17日に正式署名される過程で、トランプ氏はネタニヤフ氏を厳しくののしったこともあった。

米政府はイランと直接交渉し、停戦にレバノンも含めた。イスラエルは重要な決定で「蚊帳の外」に置かれるようになった。

「米イラン合意はネタニヤフ氏への決定的な打撃だ」と、ネタニヤフ氏の元顧問アビブ・ブシンスキー氏は語る。「イランとの戦争に負けただけでなく、トランプ氏という友人も失った。今や国際的に孤立しているだけでなく、トランプ氏との重大な争いに巻き込まれている」とした。

トランプ氏とネタニヤフ氏の亀裂は、個人的な関係にとどまらず、目標の乖離(かいり)の広がりにまで及んでいる。トランプ氏は新たな中東戦争からの離脱を目指しているのに対し、ネタニヤフ氏はイスラエルの安全保障にとって、イランとヒズボラへの継続的な圧力が不可欠だと考えている。

トランプ氏は米国の利益を追求する上でイスラエルの優先事項を覆す用意があることを示唆している。今月のテレビインタビューで、「(自分がネタニヤフ氏に)何かをするように言えば、彼は従う」と語った。

<中東諸国が距離>

ネタニヤフ氏にとってさらなる痛手は、中東諸国のイスラエルを見る目が変わったことだ。

同氏は自らの政治的命運を2つの目標に賭けていた。1つはイラン体制を崩壊させないまでも弱体化させることと、もう1つは「アブラハム合意」を拡大してサウジアラビアとの関係正常化を確実なものにすることだ。

どちらも実現していない。サウジアラビアなど、ネタニヤフ氏が関係改善・強化を望んでいた国々は今やリスク回避に向け、イスラエルとの関係正常化を遅らせる一方で、イランとのルートを慎重に再開している。

イランの当局者は、複数の国が現在、新たに形成されつつあるイラン寄りの枠組みの中に居場所を求めており、アブラハム合意を拡大しようとするネタニヤフ氏の動きは鈍っていると指摘。「これはイランの勝利というだけでなく、ネタニヤフ氏の失敗だ」と語った。イランは生き延びただけでなく、より影響力のある地域のプレーヤーとして台頭している。

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