Casey Hall Samuel Shen Kane Wu

[上海/香港 25日 ロイター] - 米宇宙開発企業スペースXが歴史的な市場デビューを果たしてからわずか2日後の14日、中国の宇宙スタートアップが初の資金調達ラウンドに向けた投資家説明会を開いた。宇宙開発競争で米国に追いつくことを目標に掲げた。

テクトロニック・マリタイム・スペース・システムズは上海を拠点とし、海上からのロケット打ち上げに注力する。同社が掲げる使命は「世界の商業宇宙飛行において海運大手マースク(のような地位)を築くこと」だ――。財務担当のグー・メイ氏は約50人のベンチャーキャピタル(VC)投資家にこう語った。

投資家への説明資料によると、設立からわずか3カ月のテクトロニックは、その目標を達成するために15億元の評価額で1億5000万元(約35億4200万円)を調達を目指している。

テクトロニックは今後5年間で、計30億元を3回の追加調達ラウンドで集める計画で、2032年の上場時には、現在の30倍を超える約500億元の評価額を目指している。

グー氏は「需要は非弾力的で、供給は限られており、時間は刻々と過ぎている。このラウンドに参加する投資家は、26.7倍のリターンを得ることが見込まれる」と訴えかけた。

この強気な売り込みが浮き彫りにするのは、中国政府が「戦略的新興・未来産業」と呼ぶ、宇宙、量子技術、核融合、脳と機械を接続するインターフェース(BMI)などに注力するスタートアップ企業間の投資家争奪戦だ。

テクトロニックのような企業による資金調達ラッシュは、長年の低迷からの回復に苦しむ中国のベンチャー投資会社にとって、収益性の高い機会を生み出す可能性がある一方、その熱狂はスタートアップの評価額を押し上げ、バブル形成への懸念も呼び起こしている。

中国の調査会社ベンチャー投資コンサルティングによると、同国における今年最初の5カ月間のVC・プライベートエクイティ(PE)投資は、前年同期比で約60%増の計6200億元(916億ドル)に達した。

また中国証券投資基金業協会のデータでは、今年1月から5月の新規登録VCファンドの募集額は1540億元に上り、すでに昨年の合計を超えている。

上海でハイテク分野に投資しているアイビー・キャピタルの経験豊富なベンチャーキャピタリストでパートナーのヤン・カイ氏は「(中国における)熱狂のレベルは、私のこれまでのキャリアで見たことがないほどだ」と語った。

同氏によれば、売上高のないスタートアップが最初の資金調達ラウンドで数十億元を調達することができ、その取引が完了する前に投資家が2回目のラウンドに列をなし、既に3回目の交渉が始まっているといったケースまである。

<取り残される恐怖>

VC投資の拡大は、中国政府が3月に公表した次期5カ年計画において、バイオ製造や水素エネルギーも含む「未来産業」を強化する必要性を強調したことに伴う動きだ。

計画ではロボット工学や航空宇宙などの分野も、優先開発対象となる戦略的新興産業として位置づけられた。

中国は今月、利益も売上高もない先端技術企業である「未来産業」のスタートアップについて、国内株式市場への上場を支援する規則も公表した。

上海に拠点を置くランタン・キャピタルの共同創設者、ホアン・イエン氏は「われわれの戦略はトレンドに従うこと、つまり国家戦略の指針に従いながら、市場のアプローチを用いて投資対象を選択することだ」と述べた。

ホアン氏は、中国でスペースXに最も近い企業とされるランドスペース(藍箭航天)への10年前の投資から、ほぼ100倍のリターンを見込んでいる。同氏は「鍵は、国家が求めるものと市場が必要とするものを結びつけることだ」と述べた。

アトム・ベンチャーズのパートナー、レイモンド・フェン氏は「誰もが未来産業に資金を投じている」と説明した上で、核融合や量子技術、身体性AI(エンボディードAI)の分野ではベンチャーファンド間の投資競争が激化していると付け加えた。

北京に拠点を置くVCコンサルタント、ゼロ・ツー・アイピーオー(清科集団)の倪正東会長は、中国の初期段階の投資家の間には「取り残されることへの恐怖(FOMO)」という強い感覚があり、一部のファンドはより頻繁に投資を実行していると話す。

<政府がバックアップ>

米中のハイテク競争が激化するなか、VC案件の大半は中国国内の人民元建てファンドによるものだ。一方、データ分析会社プレキンによると、12日時点で中国特化型のドル建てファンド5本が計40億ドルを調達した。これは過去2年間のそれぞれの年間合計額を超えている。

事情に詳しい関係者の話では、「真格基金」や「啓明創投」、「今日資本」といったベンチャーファンドが、新たなファンドの組成に向けて市場に戻ってきており、中国テクノロジーへのグローバル投資家の関心回復という波に乗っているという。これら3社はロイターのコメント要請に応じなかった。

ただ、業界の現在の流れは「あまりにも速すぎ、過熱しすぎている」と言う関係者の声もある。

シンクタンク光輝M&Aの責任者を務める余鉄成氏は「フォトニックチップ(光で情報処理を行う半導体)のプロジェクトは昨年は評価額10億元だったが、現在は100億元の価値がある。ロケット・衛星プロジェクトは年初に50億元と評価されていたが、今は200億元だ」と指摘した。

余氏は、さらに高い評価額での上場という期待が実現しなければ「こうした投資は極めて危ういものに見えるだろう」と警戒する。

もっとも、今のところテクトロニックのような「新興・未来産業」を代表する企業らは、AIや宇宙などの分野で米国との格差を縮めようとする中国政府の後押しを追い風にしている。

テクトロニックのウー・チュンフイ最高財務責任者(CFO)は、衛星軌道上の宇宙空間を巡る競争は世界的に激化しており「テクトロニックのような企業に民間資本が参加することに対し、政府の強力な支援がある」と語った。

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