Yusuke Ogawa
[東京 19日 ロイター] - 6月に開く株主総会で、アクティビスト(物言う株主)から提案を受けた日本企業は52社と、前年を上回り過去最多となった。持ち合い株の解消などを背景に存在感を高めているアクティビストだが、足元では制度の見直し論が強まり、包囲網も進む。
自民党は18日、プロジェクトチームを立ち上げ、対応策を議論する会合を開催した。歴史的な株高で割安に放置された企業も減り、日本のアクティビズムは転機を迎えつつある。
<相次ぐトップ解任議案>
大和総研が6月12日時点で集計した。アクティビストから提案を受けた社数は前年の51社を上回った。議案のテーマ別では、従来は増配や自社株買いなど株主還元に関連した内容が多かったが、今年は「取締役の選解任」の増加が目立つ。
例えば、米ダルトン・インベストメンツは、社外取締役の選任に関する提案を、ヤクルト本社などに送付。香港に拠点を置くオアシス・マネジメントは、KADOKAWAの株主総会に向けて、業績悪化を理由に夏野剛社長の取締役解任を求める提案を行った。
ほかには、米カナメ・キャピタルがドラッグストアのカワチ薬品に、英アセット・バリュー・インベスターズ(AVI)はIT機器のワコムに対して、取締役解任の株主提案を出した。
日本は米国に次ぐ世界有数のアクティビスト活動国ともいわれ、アイ・アールジャパンによると、日本に参入しているアクティビスト・ファンド数は2020年の46から、25年には75に増加した。大和総研の吉川英徳主任コンサルタントは「アクティビスト側にやり過ぎとも言える行動が一部見られ、日本企業の反発を招いている」と指摘した。
<株主提案権が焦点に>
アクティビストの攻勢に対する包囲網は着々と築かれつつあり、自民党の資産運用立国議員連盟は5月、高市早苗首相に会社法関連の提言を渡した。現行制度では、株主提案権の行使に「総株主の議決権の1%以上」か「300個以上の議決権」などが要件とされているが、後者を見直し、提案のハードルを高めるのが狙いだ。
経済界からは「アクティビストは、短期的なリターンを得ようとしているに過ぎない」として厳しい対策を求める意見が多く、自民党では今月18日、対応を検討するプロジェクトチーム(座長:小林史明衆院議員)の初会合が開かれた。
このほか政府は、アクティビストによる株式の大量買い付けの増加をふまえ、「大量保有報告書」の不提出や虚偽記載に対する課徴金引き上げなどを盛り込んだ改正法案を今国会に提出。経済産業省の研究会では、上場企業の非公開化を巡る、アクティビストと買収ファンド(PEファンド)との不透明な関係が議論に上がっている。
一方で、ダルトン共同創業者のジェームズ・ローゼンワルド3世氏は先月、東京都内で開催されたイベントで「私は長年にわたり日本への投資をしている。株式の平均保有期間は7年を超えており、短期筋の投資家であるはずがない」と主張。カナメ・キャピタルの槙野尚パートナーは、株主としてカワチ薬品側と水面下の対話を続けたが、経営に改善が見られなかったと説明し、「取締役会が機能していないので、我々は株主提案をせざるを得なくなっている」と話した。
<ブームの行方は>
ただでさえ株高局面で割安に放置された銘柄は減少しており、ファンド業界からは「日本のアクティビズムのブームはすでに9回裏だ」との声もささやかれ始めた。
金融庁と東京証券取引所が今春公表したコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)の改訂案では、「現預金を含む経営資源を有効活用できているか」について取締役会に検証を求める項目が盛り込まれ、ターゲットとなりやすい低PBR(株価純資産倍率)企業やキャッシュリッチ企業は今後減る可能性がある。
三井住友信託銀行・ガバナンスコンサルティング部の白鳥琢也氏は「株主提案は一部のアクティビストに偏っていることもあり、件数の増加傾向が続くかどうかは不透明感が強い」と話した。大和総研の吉川氏は「アクティビストファンドの運用額が拡大し、リターンを上げる難易度が高まっている。そこに(政策面での)逆風が吹き始め、日本のアクティビズムは曲がり角に入った」との見方を示した。
(小川悠介 編集:橋本浩)