Tim Kelly John Geddie Ben Blanchard

[東京/台北 19日 ロイター] - ウクライナのドローン産業が、防衛力強化を急ぐアジア市場への進出に動いている。ロシアとの戦いで実証済みの技術を台湾有事の抑止力に生かせるとして、日本、台湾、フィリピンの当局や企業との接触を活発化。なかでも産業基盤が整う日本への関心は強く、アジア市場全体への足がかりと位置づける戦略を描く。

<「第一列島線」で有効>

今年4月、米国とフィリピンを中心とした多国間軍事演習「バリカタン」の一環として、米軍が西太平洋で水上ドローンを使って艦船を撃沈した。この非公開の訓練から間もなく、ドローンを開発したウクライナ企業のトップが日本を訪れた。量産体制を日本国内に構築し、自衛隊に供給するとともに周辺国へ輸出する提案を伝えるためだった。

ユーフォース社の水上ドローン「マグラ」は、ウクライナ軍が黒海でロシア海軍の活動を制約するのに寄与してきた。東アジアの海を巡る地理的環境は大きく異なるが、「状況は酷似している」と、同社のオレグ・ロギンスキー最高経営責任者(CEO)はロイターの取材に答えた。

軍事専門家の間では、日本の九州から南西諸島、台湾、フィリピンまで連なる「第一列島線」で中国の海洋進出を阻む上でドローンの果たす役割は大きいとの見方が一般的だ。米ハドソン研究所のシニアフェロー、ブライアン・クラーク氏は、第一列島線は島と島の間隔が狭く、ドローンを活用して艦船や航空機の動きを抑止しやすいと指摘する。「速度も十分で、海峡を通過しようとする艦船を待ち伏せすることが可能だ」と話す。

アジアに目を向けるウクライナのドローン企業はユーフォースにとどまらない。防衛分野の企業やコンサルタント、当局者ら20人への取材から、多くのメーカーがアジア諸国の需要を取り込もうとしている実態が浮かび上がった。台湾やフィリピンにも直接売り込みをしているが、特に技術力と生産基盤を兼ね備えた日本をアジア市場への玄関口として注目している。

ロシアがウクライナへ武力侵攻した2022年以降、日本は東アジアでも同様の紛争が起きかねないとして安全保障戦略の見直しを進めてきた。国内総生産(GDP)の2%まですでに引き上げた防衛費をさらに積み増し、国内にドローンの生産能力基盤を構築しようと動いている。条件を満たせば殺傷能力のある武器も輸出できるよう今年4月に規制を見直し、フィリピンなどと案件を協議している。

「日本はアジア市場への最良の入り口だ」。ウクライナのドローン企業ゼネラル・チェリーの共同創業者、スタニスラフ・フリシン氏はロイターにそう語った。同社は6月上旬に東京で開かれたドローン展示会に出展し、提携候補先の企業と接触するとともに、在日ウクライナ大使館主催のイベントで日本の政府関係者と交流した。

米国に上場するスウォーマー は、実戦で成果を上げたウクライナの技術のデモを自衛隊の部隊に実施した。アレックス・フィンクCEOによると、AI(人工知能)ソフトでドローンの群れを制御し、探知・攻撃する様子を実演したという。部隊名など詳細には言及しなかったが、仲介役を担ったのは日本の楽天グループだと明らかにした。同社の三木谷浩史会長はウクライナを支持する日本の実業家の一人で、2023年にキーウを訪問している。楽天はロイターの取材に対し、デモへのコメントを控える一方で、日本におけるスウォーマーの活動を支援しているとした。

スカイエトンも日本で提携相手を探している1社だ。長距離を飛ぶ哨戒用ドローンが日本にある1万4000以上の島しょ部の監視に役立つとみている同社は、昨年日本で会合を開いた。

事情を知る関係者3人によると、日本の防衛当局とウクライナのドローン企業は情報交換をしている段階だという。日本側の関心は、最新の技術動向とウクライナ産業がロシアの侵攻にいかに迅速に対応してきたかを学ぶことだとしている。日本の防衛省はロイターの問い合わせに、すぐに回答できないとした。防衛省は沿岸部で敵の上陸を阻止する防衛構想「シールド」を進めており、2027年度中に数千機のドローンを配備することを目指している。近く提案企業を募集する。

年内に政府が改定する国家安全保障戦略への提言策定に関わる自民党の小野寺五典・元防衛相は「実際に有効な威力を発揮している装備を導入する意義は大きい」と語る。防衛装備移転の議員連盟の一員として、昨年はウクライナの大使や企業とも意見交換をしたという。

<日本進出のハードル>

ウクライナ企業が目指す日本への進出にはハードルもある。パートナーとなりうる日本企業の中には、軍事に関わることに慎重な企業が少なくない。現在も紛争が続くウクライナ企業との提携となれば、そのリスクはさらに高まる。経済効果と長期間戦い続ける能力の強化を両立させる観点から、政府が国産を優先する可能性もある。

さらにウクライナ企業は、中国製部品への依存度を減らす取り組みを進める必要がある。5月上旬、台湾の台中市でウクライナと台湾のドローン企業が一堂に会した。会合を主導したのはウクライナのドローン業界団体アイアン。代表のウォロディミル・チェルニウク氏によると、部品の調達先を開拓することが主な目的だった。

参加した台湾企業の一社、錦明実業のエルソン・チャン氏は、台湾向けのドローン販売も視野にウクライナ企業と初期段階の協議を進めていると明らかにした。「台湾の防衛力をもっと高めたい。ウクライナの技術を吸収したいと思っている」と語った。

チェルニウク氏は今年、パートナー企業を探す加盟社を連れて日本も訪れる計画だ。「いかなる国に対する侵略も、ウクライナのドローンが守ることができるなら喜ばしい」と同氏は語った。「侵略がどういうものか、我々は身に染みてわかっている」

(取材協力:鬼原民幸、久保信博、Karen Lema、Dan Flynn 編集:橋本浩、Katerina Ang)

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