「ネオJMB」とIS:緩やかな連関を見せる現代テロネットワーク

実行組織については、バングラデシュ国内の過激派組織ジャマアトゥル・ムジャヒディン・バングラデシュ(JMB)の分派とされる「ネオJMB」が中心的役割を担ったと広く認識されている。

事件後、いわゆるイスラム国系メディアが犯行声明を発出したが、その関与の性質については慎重な検討が必要である。

すなわち、ISが作戦を直接指揮したことを示す確証は確認されておらず、多くの研究では、ネオJMBは組織的には一定の自律性を維持しつつ、ISのイデオロギーやプロパガンダから強い影響を受けた地元組織と位置づけられている。

この点は、中央集権的な指揮命令体系とは異なる、緩やかな連関を特徴とする現代テロネットワークの一形態を示している。

「富裕層・高学歴」の若者たち:単線的ではない過激化のメカニズム

また、本事件の特筆すべき点として、実行犯の社会的背景が挙げられる。彼らの多くは都市部の中産階級以上の家庭に育ち、国内外で高等教育を受けた若者であった。この事実は、貧困や教育不足を過激化の主因とする単線的な説明の限界を示している。

近年のテロ研究においては、過激化はむしろ、個人のアイデンティティの揺らぎ、社会的帰属意識の希薄化、宗教的純化への志向など、複合的要因の相互作用によって生じると理解されている。本事件もその典型例の一つと位置づけることができる。

さらに、情報環境の変化も見逃せない要素である。ISは当時、インターネットやSNSを通じて高度に洗練されたプロパガンダを展開しており、地理的制約を超えて思想的影響を拡散していた。

ダッカ事件の実行犯がどの程度直接的にオンライン影響を受けたかには個別差があるものの、こうした情報空間が急進化の重要な媒介となり得る点は否定できない。

強硬な治安対策の成果と、潜在する「地下化」のリスク
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