Douglas Gillison

[ワシントン 8日 ロイター] - 専門家の話や新たなデータによると、予測市場プラットフォームを監視する米政府機関は11月の議会中間選挙を巡る賭けの取り締まりに苦戦する可能性がある。数千もの選挙戦が予定されており、インサイダーにとっては急成長するプラットフォーム上で手っ取り早く金を稼ぐ方法がかつてないほど増えている。

2大プラットフォームの「カルシ」と「ポリマーケット」で不審な取引が急増し、これらの急速に拡大する市場がインサイダー取引の新たな抜け道を生み出しているとの懸念が高まっている。

カルシは4月、自身の選挙戦に賭けたとして3人の連邦議会候補者の取引を停止した。また規制当局はジョージ・サントス元下院議員がカルシでインサイダーの疑いがある取引に関与したかどうかを調査している。

今年は少なくとも6590に上る州と連邦の議会の議席が選挙を迎え、選挙戦を巡る賭けの大量発生が見込まれる事態は、この新しい市場にとって市場保護上の試練となる。関係者によると、インサイダー取引がこの市場で依然として法的に曖昧な概念のままであり、規制当局は人員不足に陥っているという。

予測市場の監督を研究しているセトン・ホール法科大学院のイリヤ・ベイリン教授は「中間選挙でインサイダー取引が発生した場合、対応が遅れるかあるいは全く対応されない可能性がある」と指摘した。

カルシとポリマーケット、および予測市場の管轄権を主張している商品デリバティブ規制機関の米商品先物取引委員会(CFTC)はさまざまな監視ツールやその他の手段を備えており、こうした課題に対応可能だと話している。

各プラットフォームもまた管理を強化しており、カルシは政治家や選挙陣営スタッフの選挙取引を阻み、ポリマーケットは非公開情報に基づいた取引の取り締まりを実施している。米上院は4月、議員とスタッフが予測市場で賭けるのを禁止した。

ピュー・リサーチ・センターの分析では、カルシとポリマーケットを合わせた世界全体の月間取引高は昨年9月から4月までに5倍近く拡大して約240億ドル(約3兆8441億円)に達した。これは、米国内で昨年合法的なスポーツブックで賭けられた月平均約140億ドルを大きく上回っている。

<拡大する情報の非対称性>

トレーダーは予測市場で多種多様なイベントの結果について二者択一の「はい」または「いいえ」の契約を取引できる。

例えば、どの政党が連邦議会や州議会を支配するといったことや、それぞれの選挙戦の結果とともに選挙期間中や候補者を巡る個別のイベントに対しても賭けられる。

全米州議会議員連盟によると、今年は約470の連邦議会選挙に加えて、6122の州および海外領土の議会の議席が選挙を控えており、さらに地方検事、市長、司法職、その他の公職の選挙も予定されている。それぞれの候補者は選挙スタッフや世論調査員、資金調達者、寄付者、友人や家族といったインサイダーを生み出すのだ。

商品デリバティブ市場はインサイダー取引を禁止しているが、法律の専門家の話では、これまでに摘発された事例は比較的少ない。前出のベイリン氏は、選挙は未公開の世論調査データから暴露間近のスキャンダルまで、インサイダーに抵触する可能性のある非公開情報の「見本市」状態となっており、規制当局が十分に理解していない一部の情報も存在すると指摘する。

非営利の調査グループ「腐敗防止データコレクティブ(ACDC)」によると、ポリマーケットは大統領選のあった2024年に1293の関連市場を立ち上げ、取引高が72億6000万ドルだった。

主要な選挙戦が少なかった昨年はポリマーケット上の米選挙市場の数が減少したが、選挙戦の数に対する市場の比率は7倍の17.4に急上昇した。ACDCの研究員のミシェル・ケンドラー・クレッチ氏は、こうした状況は選挙市場がこれまでよりも細分化していることを示していると説明する。

ACDCの最新分析に基づくと、これらの市場はますます勝者や敗者でなく投票率、得票差、候補者がいつ辞退するかのようなレースの変数に焦点を当てるようになっている。

<規制の強化と人員不足>

カルシとポリマーケット以外にも、米国で認可された少なくとも4つのプラットフォームが選挙関連の契約取引を提供しており、数社の仲介業者がその商品に対するアクセスを提供し、他にも数社が新規参入を目指している。伝統的な市場と同様、各社が不正防止の第一線を担う。

ポリマーケットは最近、米国事業を立ち上げたが、その主要な取引所は米国の規制を受けておらず一般的に「本人確認」を義務付けていない。ポリマーケットは米国居住者の利用を禁止しているが、当局はそれらの規制が容易に回避され得るとの懸念を指摘してきた。

ポリマーケットの広報担当者は「当社は包括的な市場公正性の枠組みを維持している」と述べ、透明性に重点を置いていると強調した。

この担当者に話を聞いたところ、ポリマーケットは内部監視システムのおかげで、これまでに約100のユーザーの取引口座を法執行機関に告発した。その中には、米軍兵士がベネズエラのマドゥロ大統領の退陣を巡るインサイダーの賭けに利用したとされるウォレットも含まれていた。

カルシの法執行責任者を務めるロバート・デノート氏によると、カルシは契約の結果に直接影響を与える立場にある全ての人々をインサイダーと定義している。カルシは本人確認に加えて公的記録を活用し、連邦政府の政治家や選挙陣営スタッフが取引をする前にその身元を特定している。また、データが利用可能な地方選挙も同様の措置を講じる予定だ。さらに、取引に異常がないかどうかも監視している。

デノート氏は「ツールを活用し、大量の情報を収集できる」と述べ、作業量が膨大になり得るが十分に管理できると付け加えた。

ただ14年から17年までCFTCの法執行局長を務めたアイタン・ゲルマン氏は、これらのツールがいくら強力でも、最終的には人間が調査する必要があると訴える。例えば、カルシが4月に摘発した事例は、人間が利用者を最終的に特定する必要があったことが示された。

連邦予算データによると、CFTCの法執行部門の職員数は105人と少なくとも過去20年間で最低の水準に落ち込んでおり、多くの経験豊富な調査官が組織を去っている。ゲルマン氏はCFTCに大量の告発を詳細に調査するだけの人員がない可能性があるとの見方を示した。

CFTCの報道官は、経験豊富な職員を頼りにしており、昨年12月以降も継続的に採用を実施していると述べた。

しかしゲルマン氏は、CFTCの人員は、直面するニーズを満たすには「程遠い」状況だと主張した。

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